前回に引き続き私事の話。小6の息子はこの冬、中学受験をする予定。ご多分に漏れず、塾に通って大量の宿題をこなす日々だが、夏休み頃まではどうもエンジンが掛からなかった。

 原因の1つはモチベーションの欠如にあったようだ。ある時「お母さん、なんで受験した方がいいの?」と聞かれた。「良い学校に入ったら、将来自分のやりたい仕事ができた時、その仕事に就ける可能性が高くなると思うよ」と答えたものの、あまり納得できなかったようだ。10年以上先の「やりたい仕事」と言われてもぴんと来なかったのは当然かもしれない。

 そんな息子がある時から少し変わった。「高校までつながった中学に入ったら、高校の受験勉強をする代わりに自分の好きなことをたくさんやれるから」とやや前向きになってきた。どうやら夫が入れ知恵したらしい。自分も中学受験を経験しただけあって、小6の「やる気のスイッチ」を心得ているなあとちょっと感心した。

 モチベーションは人によって違う。「世界をもっと良くしたい」という崇高で遠大な目標に駆動される人もいれば、「ライバルより少しでも多くの成果を出す」ために極限まで努力できる人もいる。

 モチベーションマネジメントの専門家は、その原理を体系的に分析している。JTBモチベーションズ(東京都港区)は、仕事におけるやる気の要因を9つの「モチベータ」として定義している。今の仕事が好きで自分に合っているという「適職」、困難や障害を乗り越えることにやる気を感じる「環境適応」、上司や周囲から寄せられる期待や信頼でやる気が上がる「期待・評価」などだ。

 ビジネスパーソンと小学生を同じ枠組みで分類することはできないだろうが、進学に際して未来の職業選択を視野に入れた自分のモチベータが「適職」だったのに対し、ごく近い将来に自分のやりたいことができるということに価値を置いた息子は「自己表現」が強いモチベータだったといえそうだ。

他人を知るにはまず自分のモチベータから

 こう見てくると、普段一緒に仕事をする仲間のモチベータが分かれば、仕事をスムーズに進められそうだ。例えば、周囲の期待や評価が強いモチベータである部下には、「君のおかげでチームに勢いが出てきた」と感謝を示すことで、気持ちよく働いてもらうことができる。逆に難しい仕事をやり遂げることに生きがいを感じる同僚に、「仕事だけじゃなくて私生活も大事にしろよ」と余計な一言を発すると、「おまえに何が分かる」といら立たせてしまうかもしれない。

 とはいえ、他人のモチベータが何なのかはそう簡単に分からない(息子のモチベータも分からないくらいなのだから)。仕事を共にする仲間であっても、価値観をお互いに吐露し合うような機会はそう多くない。

 では手段が無いかといえばそうではない。まずは自分のモチベータを知ることが他者理解にも役立つのだ。

 JTBモチベーションズは「『やる気』分析システムMSQ」というモチベータの診断サービスを提供している。ネット上で数十項目のアセスメントに回答すると、9つのモチベータのどれに関心が高いか、そしてそれがどれだけ満たされているかが定量的に算出されるというものだ。
 
 数年前に受講したところ、自己診断どおりの結果もあれば、意外な結果もあった。仕事をバリバリやり抜く「業務遂行」や、困難に挑戦する「環境適応」のモチベータは予想通り弱かった。一方で今の仕事を好きだと感じる「適職」や仕事で個性を発揮できている「自己表現」が高かったのには驚いた。「自分は(意外と)仕事が好きだったんだ」と感じたことが、その後仕事で落ち込んだ時、持ち上げてくれる1つの支えにもなった。

 自分のモチベータが分かると、それを基準に他者のモチベータを推測することも可能になる。「自分ですら結構仕事が好きなのだから、あの人は仕事と心中するくらい好きだろう(だからどんなにハードワークでも心配無用)」「あの人は自分とは真逆で、達成意欲が強そうだ(だから自分が足を引っ張らないようにしなくては)」。あくまでも推測に過ぎないが、地雷を避けることはできそうだ。

 日経情報ストラテジーは2011年12月7日にJTBモチベーションズの菊入みゆき氏らを講師に招き、「自己の理解を深め、部下のやる気を引き出す モチベーションマネジメント実践セミナー」を開催する。参加者には「『やる気』分析システムMSQ」の受講特典がある。事前に自己診断をした後、セミナーではそれぞれのモチベータが高い人との接し方をロールプレーも交えて学べる。

 部下のモチベーションを上げて成果を出したい、同僚と良好な関係を築いて快適に仕事をしたいと思われる方に、是非ご参加いただきたい。