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基幹系とは最も重要なシステムのはずだが最近、基幹系システムの話をすると、人により「基幹系」についての認識が異なり混乱することが多い。以前なら「基幹系ってERPのこと」でも済んだが、ERPなど既存の基幹系システムの適用範囲のほとんどは間接業務。ITの適用領域が直接業務や商品そのものに広がるにつれ、「間接業務が基幹業務なのか」という当然の疑問の声が上がる。基幹系システムの再定義が必要な時かもしれない。 実は以前から、ユーザー企業によって基幹系の定義は本来ならバラバラのはずだった。銀行なら勘定系システムであり、卸なら物流管理システム、製造業なら生産管理システムだ。もちろん個々の企業によっても違う。例えば製造業では、つい最近まで「生産管理システムなど不要」と豪語していた世界的な日本企業も存在した。 企業によって基幹系、それどころか情報システムの位置付けがこんなに違うのに、ITベンダー側のある事情で基幹系の定義を一律にしてしまった。ERPを広く売りたいがためである。個々の業種、個々の企業により事情は異なるとはいえ、間接業務中心なら機能面でANDが取れる。「ベストプラクティス」などのふりかけをまぶし、業務改革ための“魔法の杖”のように喧伝して売りまくった。 その結果、ビッグバン導入の失敗など導入企業でいろんな不幸もあり、最終的にはERPのメッキは剥がれ落ち、今やユーザー企業の間では普通の統合型業務用パッケージソフトという認識に落ち着いた。ただ、「ERPが基幹系」という認識はまだ広く残っているため、基幹系システムのイメージは間接業務に矮小化されたままだ。 基幹系システムは本来、企業にとって最も重要なシステムのはずである。もちろん会計などの間接業務も重要な業務だし、ERPはリストラやM&Aなど事業ポートフォリオを入れ替える際には極めて重要な経営ツールになる。ただ、お金を稼ぐ直接業務や商品自体を支えるシステムはさらに重要である。これからの基幹系システムは、まさにそうした稼ぐためのシステムであらなければならない。 例えば、金融機関や旅行会社など接客サービスの企業にとって、店舗業務をペーパーレス化するシステムは基幹系である。単に業務の効率化だけではなく、顧客とのやり取りを一元管理することで、誰が接客しても均一なサービスを提供できるようになるため、顧客満足度の向上が図れるからだ。製造業なら、自動車や建機などの製品にITを組み込んで、様々な付加サービスを提供するシステムが、これからの基幹系になる。 実際そんな問題意識から、直接業務や商品自体を支えるシステムを基幹系とみなし、そこに多額の投資を行うユーザー企業は増えている。もちろん、グローバルなM&Aを推進している企業の中には、ERPを基幹系システムと認識する企業もまだ多い。結局、ユーザー企業によって基幹系の定義は、以前のようにバラバラになりつつある。で、それを認識しないで話をするから、今の基幹系論議は混乱してしまうのだ。 さて、直接業務などを支える新たな基幹系システムは、ERPなどの従来の基幹系システムとは、当然のことながら、導入方法からして違う。ERPの導入では「利用部門の要求を聞き過ぎるな」が鉄則だが、新たな基幹系システムの構築はビジネスそのものをつくることに等しいから、当然ビジネスの現場と密着して要件を検討することになる。 この辺りのことを、ITベンダーはよく心得ていなければならない。当然、御用聞きでは相手にされず、一緒にビジネスをつくるというパートナーの意識が必要になる。顧客のビジネス環境の変化に対応するスピード感も重要だ。今、こうしたシステムの構築を進めているユーザー企業では、ITベンダーに任せられないとして内製主義に傾く企業が多いことを認識しておく必要がある。 最後に、基幹系システムの新たな定義だが、「企業にとって戦略性を有するシステム」としてはどうだろうか。つまり、ユーザー企業のトップが「経営として重要」と認識するシステムである。 連載新着記事一覧へ >>
著者プロフィール東葛人(とうかつじん) |