「IFRS(国際会計基準)? 適用は当分、先の話なんでしょう?」---こんな印象をお持ちの方が多いかもしれない。今年6月の金融担当大臣発言に端を発したIFRS適用見直しの議論は、今も金融庁 企業会計審議会で続いており、先行きは依然として不透明な状況が続く。
IFRS適用見直しが始まる直前は、上場企業の多くがまさにIFRS対応プロジェクトを本格的に始めようとしていたタイミングだった。そこに突然、適用見直しの議論が始まり、企業に水を差した格好となった。再開して3回めになる10月17日の審議会では、適用対象を連結財務諸表に絞る「連単分離」の方向が見えてきた(関連記事:IFRS適用は「連単分離」が濃厚か、企業会計審議会で議論)が、具体的な適用の方向性やスケジュールが固まるのは、まだ先とみられる。
大臣発言前と後で、IFRSに対する関心はどのように変わったのか。それを調べてみるため、ITpro IFRSサイトへの訪問者が、どんなキーワードやフレーズ(キーワードの組み合わせ)をコンテンツの検索に使ったのかを見てみた。2010年と2011年を比較した「『IFRSの読み方』に続く話題は何か」と同様に、大臣発言前の2011年4月1日~6月15日と、発言後の同8月1日~10月30日の状況を比較した。
最初に種明かしをしてしまうと、大臣発言前と発言後で大きな違いがあるわけではない。だが、発言前には出てこなかった二つのキーワードが発言後に新たに登場した。その二つのキーワードとは何か、後をお読みになる前にちょっと考えてみていただきたい。
「IFRS」「包括利益」が上位
まず、大臣発言前の検索キーワード上位20個は、以下のようになる。明らかにIFRSとは関係のない用語は除いた。
- ifrs
- 包括利益
- 国際会計基準
- コンバージェンス
- IFRS
- 会社法
- 強制適用
- 研究開発費
- 収益認識
- 原則主義
- 公正価値
- 包括利益計算書
- 適用
- 金融庁
- hoya
- 会計基準
- 適用時期
- その他包括利益
- 初度適用
- 固定資産
「IFRS」がトップなのは当然として、「包括利益」の強さが際立つ。純資産の変動を表す利益概念である包括利益は、IFRSの象徴といえる。日本の会計基準(日本基準)とIFRSの主要な差異をなくすコンバージェンス(収斂)の一環として、2011年3月期から連結財務諸表での表示を義務付けている。
ほかに「研究開発費」「収益認識」「原則主義」「公正価値」など、IFRSの特徴あるいは日本企業へのインパクトが大きいといわれる項目が上位に来ている。15位の「hoya」は、2011年度からIFRSの任意(早期)適用を開始したHOYAのことだ(関連記事:「決算書を二つ作るのと同じ」、HOYAがIFRSに基づく11年3月期決算を公表)。