ITホールディングス(ITHD)の中核会社であるTISが2011年秋、人員削減などの構造改革に踏み切った。全従業員の約5%にあたる400人ほどの早期退職を募集したところ、それを上回る514人が応募し、9月30日に同社を退職した。

 受託ソフト開発会社を取り巻く環境は数年前から厳しさを増している。最大の理由は、システム構築の需要が伸び悩んでいることにある。難しい案件が増え、不採算化するプロジェクトも増加傾向にある。そうしたなかで、有力ITサービス会社が規模拡大に走り、売上高3000億円超を目指し始めていた。「3000億円」が生き残りの条件の一つと思われていたからだ。

生き残りをかけた“体力勝負”が本格化

 2008年4月にTISとインテックが経営統合して誕生したITHDもその1社である。同社はその後、中堅のソランやユーフィットなどを傘下に組み入れるなどで、従業員2万人超の規模になり、売上高4000億円も射程距離に入ったとみられていた。

 ITホールディングスの岡本晋社長は2009年11月、「日本経済の足腰が弱くなっているのだから、体力をつけた大きな企業が生き残る時代になる。適者生存に向けて体質を改善する一方、体力をつける努力が必要」と規模拡大に走る理由を説明していた。ただし、グループ会社は分離して経営する“八ヶ岳連峰経営”の形態を採る。

 だが、ITHDの業績は伸び悩む。売上高は、2008年度の3383億円から2009年度は3138億円に減少し、2010年度は3231億円、2011年度見込みは3250億円となっている。とりわけTISの売上高は1000億円を大きく割り込み、2010年度に約820億円と低迷した。そうした中で、2011年4月にTISとソラン、ユーフィットを合併させた。従業員8000人近い規模になったところで、人員削減を実施したのだ。ただし、「TISとインテックを合併させるつもりはない」(岡本社長)。

 受託ソフト開発業界には、そうした前兆があった。2008年から2011年かけて、複数の中堅受託ソフト開発会社が人員削減を始めていた。静かに市場から退場した中小企業も少なくなかった。ユーザー企業がIT投資を大幅に抑制したことで、大手ITベンダーが協力会社を絞り込む一方、オフショア開発を加速させた。生産性向上を図るために、開発テスト環境のクラウド化も活発化させた。

「経営統合して丸4年、辛い思いをしてきた…」

 これらの影響が有力ITサービス会社でも表面化してきたわけだ。

 それでも岡本社長は、11月4日に開催した2011年度中間期決算説明会で「トップライン(売上高)の伸長とストックビジネスの拡大を図る」と強気な発言をする。人員削減やグループ会社のオフィス統合によるコスト削減効果で利益増は見込めるだろうが、成長施策の内容は「TISとインテックの営業力強化と顧客基盤の拡大」「クラウドビジネスの推進」「グローバル展開」という。

 岡本社長は「経営統合して丸4年たつが、辛い思いをしてきた。次の中期経営計画(2012年4月スタート)で新たな成長を目指す」とする。その具体策を公表するのは12年2月、3月になる。受託ソフト開発からサービス化へと向かう業界のパラダイムシフトに向け、ビジネスモデルをどう再構築するのか。正念場にある。