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プロマネは「責任」の前に「5つの権限」を持て

2011/09/26

 8月11日(2011年)、人形町の日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)で「企業ネットワークの動向と3つのポイント」と題して講演した。3つのポイントとは、次世代WAN、スマートデバイス、そしてFMC(Fixed Mobile Convergence)だ。

 4時間という長丁場の講演で、15分の休憩をはさんで前後2時間ずつ話した。次世代WANやスマートデバイスは単に技術やアイデアの説明をするだけでなく、設計品質の良さや現場の工事担当者の根性を物語るエピソードを紹介した。自ら現場に出てプロマネをやっていると、色々面白い経験ができるものだ。

 さて、本論に入ろう。プロジェクトを成功させるうえで、プロジェクトマネージャー(プロマネ)の果たす役割は大きい。これまで経験したり、見聞きしてきた失敗プロジェクトから分かるのは、「プロマネの権限と責任のバランスが取れていないと失敗しやすい」ということだ。つまり、責任を果たすために必要な権限を持っていないのだ。世の中にはまれに「権限だけあって責任を取らない人や組織」もあるが、それは議論する価値もない。

 プロマネにはプロジェクトを成功させる責任がある。しかし、責任より前に、十分な権限が必要だ。今回はプロマネが持つべき権限について述べたい。

まず必要なのは「提案する権限」

 プロマネに必要なのは、(1)提案する権限、(2)必要な人材や組織をアサインする権限、(3)スケジュールとコストを決める権限、(4)プロジェクトを管理する権限、(5)提案しない権限---の5つだ。

 一番大切なのは、(1)の提案する権限である。(2)の人材や組織をアサインする権限(パートナー会社を含む)や、(3)のスケジュールとコストを決める権限も、(1)に含まれると言える。開発体制図や見積もりのない提案などないからだ。営業や経営者からの圧力に左右されず、プロマネがこれらの権限を行使できねばならない。

 提案する権限がなく、ただ名前が体制図に組み込まれたプロマネほどかわいそうなものはない。適切な人材が用意され、十分な予算とスケジュールがあるとプロマネが納得していないプロジェクトは、ほぼ間違いなく失敗する。このコラムで何度も書いてきたように、提案から設計・構築までプロマネは一貫して同じ人がすべきなのだ。

 筆者は20年近く前に、「人材をアサインする権限」が不足していて失敗したことがある。自分で開拓し、提案を始めた案件だったので「提案する権限」は元からある。大手銀行にネットワークコンサルティングを提案し、数千万円で受注した。ここまでは成功だったが、コンサルの後の設計・構築の受注に失敗した。当時課長だった筆者は、自分の手の届く範囲の人材でコンサルチームを作った。これが間違いだった。

 権限が不足していただけではない。お客様の求めるレベルと、こちらの対応力とのバランスが取れてないことに気付かなかった。コンサルは何とか完了して検収してもらったが、次のステップに進めなかった。数十憶円の受注を逃してしまったのだ。プロジェクトとしては失敗だが、納得はしていた。他人に言われてやったことではなく、すべて自分で決めてやったことだからだ。同規模の受注に成功したのは、それから5年後のことだった。

>>最後に必要なのは「提案しない権限」
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著者プロフィール

松田 次博(まつだ つぐひろ)
 情報化研究会主宰。情報化研究会は情報通信に携わる人の勉強と交流を目的に1984年発足。現在,会員数約1200人。
 IP電話ブームのきっかけとなった「東京ガス・IP電話」,脱・専用線,脱・ブランドを徹底して大規模ネットワークを構築した「積水化学ネットワーク・リストラ」など,一貫して最新の技術や通信サービスを生かした企業ネットワークの革新を提案,実現。
 近著に「企業ネットワークの設計・構築技法−広域イーサネット/IP電話の高度利用」(2003年,日経BP社),「ネットワークエンジニアの心得帳」(2005年,同),「間違いだらけのネットワーク作り」(2008年,同)がある。
 NTTデータを経て,NEC勤務。

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