「いまやトップレベルのプログラマはモバイルアプリから作る、最も優れたベンダーはモバイルサービスから提供していく」---。米グーグルのエリック・シュミット会長が米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEOと対談した際の発言である(関連記事)。

 つまり“モバイルファースト”である。この言葉は当初、Webサイト作成に当たり、PCではなくスマートフォンなどモバイル機器での閲覧をまずはターゲットにすることを指す言葉だったようだが、この記事ではもう少し広く、アプリやサービスを含めてモバイルを第一に考えて開発し提供する、といった意味で使うことにする。

パソコン時代の終焉

 さて、冒頭の発言には前段がある。「パソコンのプラットフォームは限界にきている」とシュミット氏は述べており、パソコンに代わってスマートフォンが情報機器、特に個人が持つデバイスの主役になりつつある状況を説明している。こうした見解自体はさほど目新しいものではないが、シュミット氏が言うと説得力が増す。

 モバイルファーストが当然になると、パソコン向けアプリやサービスの開発は後回しになる。もしくはそもそもパソコン向けにはアプリやサービスが提供されなくなるかもしれない。大げさな言葉でいえば「パソコン時代の終焉」だ。つまり、これがモバイルファーストで「起こること」である。

 既に結論は出てしまったが、これだとここで記事が終わってしまう。そして「パソコン時代」は終わるのかもしれないが、シュミット氏はパソコンがなくなるとは言っていないし、筆者を含め、おそらく誰もがオフィスや家庭のパソコンがすぐになくなるとは思っていない。

 そこで、以下ではもう少しその背景や今起こっていることを見ていきたい。冒頭の対談の舞台にもなった米セールスフォース・ドットコムのプライベートイベント「Dreamforce '11」のモバイル関連のブレイクアウトセッションで、興味深いスライドを見たので、まずはここから話を展開していこう。

“私物解禁”先進国アメリカ

写真1●米国での”私物解禁”率の高さを示すスライド
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 右の写真1が、筆者が興味深いと思ったスライドである。従業員が自己所有のスマートフォンなどで業務をする“私物解禁”に関するものだ(関連記事)。スライド中の写真がなぜか日本の量販店のiPhoneアクセサリーコーナーなのはご愛嬌として、筆者が驚かされたのはスライド右の数字である。

 米国において、個人のモバイルデバイスで業務アプリの使用をサポートしている組織、言い換えると何らかの業務における”私物解禁”を認めている組織の割合が、現在「46%」、そして2014年にはそれが「90%」になると予測されている。ちなみに、この調査の出典は、「Forester(2009)、salesforce.com(user survey of 672 mobile users)」「Gartner(2011) Top Predictions for IT Organizations and Users」(以上スライドの記述通り)と書かれている。