「復興」をテーマにしたコンテスト「A3 Together」(エーキューブ・トゥゲザー)の開催を決定して以来、開催準備や取材、イベント開催などで仙台に何度か足を運ぶ機会を得た。これに関連して、被災地支援で活躍されているITエンジニアの方と話すことも増えた。先週は、「復興創発会議 in 仙台」(Ustreamのアーカイブはこちら)を開催したばかりである。

 現地で活動される方に比べると、極めて限られた体験ではあるが、私が関係者の皆さんと「復興とIT」というテーマで対話し、私なりに感じたことをここで共有したい。

(1)ニーズは多様

 東日本大震災の被災範囲は広い。そして被災者が置かれている環境は多様だ。メディアを通じて見られる被災地はごく一部。カメラや公の前に姿を見せない、仮設住宅や被災住宅の中でひっそりとしている人の生活が意識されることはほとんどない。これはビジネスでも同様である。

 しかも、被災した人の生活は現在進行中である。YouTubeの動画をすべて見切れないのと同様、その全貌をつかむことは不可能だ。

 大きな事件を取材し、記事を書いて記事にして送り届ける、という従来のメディアの方法は、今回のような未曽有の被害の前ではまったく機能しない。いったん集約する、という考えでは、多くの情報やニーズが切り捨てられてしまう。被災地の人たちが「ぜひ皆に知ってほしい」という実態は、ほとんどが報道されることがない。

 しかし、これはネットが克服できる。多くの人が指摘しているが、今後被災者の支援になることや、次の震災に備えになることは、日ごろからさまざまな情報手段を確保し、定着させることだろう。以前、必要なものを必要な数だけ送り届けられる仕組みとして、Amazonの「ほしい物リスト」を紹介した。多くの人が必要とするものを自ら発信し、誰かが注目し、必要であれば支援の手を差し伸べられる手段はもっとあっていい。

 コミュニケーション手段としても、複数の手段を確保することの重要性を多くの人が認識した。震災直後、電話やメールがつながらなくても、FacebookやTwitterで家族や友人たちの消息を知ることができた。まずは緊急時に連絡したい人を想定し、その人たちとの間では、自分たちのお気に入りのサービスを選んで、普段から使いこんでおく。こうすれば、いざというときの連絡手段、情報入手の方法となる。

 もし、既存の手段が自分の要求に合わないとしたら、それはチャンス。それを自ら作れば多くの人に使ってもらえる可能性がある。以前に比べれば、今では簡単に作ったり、身近な人に頼んだりできる環境がある。