クラウドコンピューティングを活用した情報システムの利用がこれほど注目されているのなら、システムの開発現場におけるクラウド活用はもっと早く広がっていい──。日経SYSTEMSでシステム開発の現場向けの記事を担当する筆者としては、こう思う。クラウドコンピューティングについて考えるとき、開発環境という側面がどうも気になるのだ。

 クラウドコンピューティングを活用したシステムの構築事例は急速に増えている。IDC Japanが今年6月に発表した調査結果によると、2011年の国内クラウドサービスの市場規模は、前年比45.6%増の660億円となる見込みだ。2010年~2015年の年平均成長率は41.3%で、2015年の市場規模は2557億円になると予測する。

 上記の市場予測の数字は、「AaaS(Application as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「IaaS(Infrastructure as a Service)」の三つのカテゴリーの合計で示されている。このうち多くはもちろん、ユーザーが利用する本番環境のシステムで利用されるのだろうが、開発環境という用途が占める部分も少なからずあるはずだ。

仮想化技術の普及初期から活用

 例えばIaaS。開発で利用するサーバーを、物理的な機器を調達して使うのではなく、IaaSの仮想マシン上に構築するのは、クラウドが開発環境として最も多く利用されているケースだろう。

 そもそも、サーバー仮想化技術が今ほど一般的に企業の本番システムの基盤として広く使われていなかった頃、最初に利用が広がったのは、開発環境を置く用途だった。当時は企業内に構築した仮想化サーバーを利用するのがほとんどだったが、今ではパブリックなIaaS上に開発用のサーバーを構築するのも一般的だ。

 物理的なサーバーを調達して必要なソフトウエアをインストールし、ネットワークも含めた開発環境を構築するには、数週間単位の時間がかかることは珍しくない。仮想サーバー上に展開するやり方なら、1時間もかからず環境を構築できる。複数のプロジェクトで物理サーバーを共有して使うことができるので、リソース活用の効率化による機器コストの削減も見込める。

 ただ、冒頭で述べたシステムの開発現場におけるクラウド活用は、サーバーを物理環境から仮想環境に置き換えるという意味だけではない。もっと幅広く、クラウドの活用が浸透していいと考えている。