日本ユニシスの業績が低迷している。ピークの2007年度に比べて、2010年度は売上高が約25%減の2529億円、営業利益が約70%減の58億円にまで落ち込んだ(表)。
2005年度 | 06年度 | 07年度 | 08年度 | 09年度 | 10年度 | 11年度計画 | |
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売上高 | 3175 | 3075 | 3377 | 3101 | 2710 | 2529 | 2550 |
営業利益 | 51 | 63 | 196 | 158 | 71 | 62 | 70 |
経常利益 | 49 | 66 | 192 | 151 | 69 | 58 | 63 |
しかも、実際のマイナス幅は上記の数字以上に大きかったとみられる。ネットマークスの買収や米ユニシスとの資本関係解消によって、売り上げで数百億円、営業利益で100億円超のプラス効果があったはずだからだ。
“三井物産出身”ではない社長
実は前任の籾井勝人社長時代、2010年度に売上高5000億円、営業利益300億円の計画をぶち上げたことがあった。再生を任されたのは、2011年6月に社長に就いた黒川茂氏だ。これまで親会社の三井物産が社長を送り続けてきたが、今回初めてプロパー出身者を経営トップに据えた。「IT業界の現場を知らない人材による再生は不可能」との判断があったのだろう。
黒川新社長は「他社との競争は激化しており、旧来方法では生き残れない。覚悟を決めた」と背水の陣で臨む考えを示した。再生策は二つある。
一つめの策は、業績不振の根底に隠されている「現場の活力を取り戻す」ことだ。「元気がないのは毎年、売り上げが落ち込んでいるから。今期の計画を死守し、減収に歯止めをかけて、早く3000億円にする」(黒川社長)という。
ある日本ユニシス関係者は「経営層と現場の考え方にギャップがあり、事業構造転換の波に乗り遅れた」と問題点を指摘する。「縮小する従来型ビジネスの受託ソフト開発をこのまま続けるのか」「ITサービス提供にシフトさせるのか」という方針が中途半端だったという。それが如実に表れたのがクラウド事業の出遅れと、顧客満足度の低下だろう。このままでは優良顧客を失うことになりかねない。
たとえ顧客満足度を落としてでも実行する施策
そこに二つめの策である「サービスビジネスの拡充」が重要な意味を持ってくる。2010年11月に稼働した家電量販大手のヤマダ電機が立ち上げたショッピングモールサイト「YAMADAモール」が一例である。日本ユニシスがシステム構築の費用を負担し、モールへの出店料や商品販売の手数料などから収益を得るサービスモデルである。最初はリスクがあるが、横展開していくことで収益を伸ばせる可能性がある。
標準的なソリューションもいくつか用意する。「できるだけ改造を減らす」(黒川社長)ことで、開発期間の短縮化を図る。この施策は、実は顧客満足度の低下を引き起こした理由でもある。日経コンピュータの顧客満足度調査で、日本ユニシスは常にトップだったが、最近は最下位に甘んじている。「かつてはユーザーの言う通りに構築することが良いシステムにつながったが、今はユーザーの経営に直結する技術力とスピードが求められている」(黒川社長)。
社員9500人の日本ユニシス。現場目線で語れる新しい経営トップに期待する社員は少なくないだろう。だが、これから同社が進もうとする道は、これまでよりもハイリスクな道だ。
この再生策に失敗すれば、黒川社長が最後の社長になってしまうかもしれない――。そんな危機感をもって、全社員が全力を挙げて再生策に取り組むときだ。