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情報システム

記者の眼

日経コンピュータ

みずほ銀行が大規模障害を繰り返す本当の理由

2011/08/04
大和田 尚孝=日経コンピュータ

 東日本大震災からわずか3日後の2011年3月14日、みずほ銀行は大規模なシステム障害を起こした。義援金の振り込みが集中したのをきっかけに、振り込みの遅れや店舗でのサービス停止、ATM(現金自動預け払い機)の取引停止などを連発。影響は日を重ねるごとに広がり、収束までに10日間を要した。

 みずほ銀行が大規模なシステム障害を発生させたのは、9年前の2002年4月にシステム統合に失敗して以来、2度目のことだ。なぜ失敗は繰り返されるのか。それは、みずほ銀行が根本的な原因を究明し、対策を取っていないからだ。

 大規模障害を招いた直接の原因は、システム部門の不手際である。システム全体の仕様や機能をつかんでおらず、バッチ処理の運用時にミスを重ねた。それらがシステム障害の影響拡大につながったのは事実だ。だが、根本的な原因は別にある。

 根本的な原因は、みずほ銀行とみずほフィナンシャルグループの歴代経営陣のIT軽視、あるいはITへの理解不足だ。技術の詳細について分かっていないということではない。経営陣として、自社の情報システムとそれを支えるシステム部門の強みや弱み、課題などを把握していない、知ろうとしていなかったのである。

誰の「人的ミス」なのか

 例えば、みずほの経営陣は老朽化した情報システムの刷新を先送りにしてきた。みずほ銀行の現在の勘定系システムが完成したのは、さかのぼること23年前、1988年のことである。

 みずほ銀行の勘定系システムは、バッチ処理とオンライン処理を交互に実行することを前提とした設計思想を採用している。稼働当時は、それでも問題はなかった。インターネットバンキングもATMの24時間稼働サービスも存在しなかったからだ。

 ところが、インターネットの普及などによって、勘定系システムを取り巻く環境は激変した。にもかかわらず、みずほ銀行は23年前に構築した旧第一勧業銀行の勘定系システムを大幅に刷新することなく、使い続けてきた。

 その間、みずほの経営陣は、勘定系システムを長年にわたって使い続けるリスクを認識せず、システム刷新を怠った。こうした実態が勘定系システムの老朽化を招き、振り込み処理の積み残し増加や、バッチ処理の“突き抜け”によるATMサービスの停止といった、システム障害の影響拡大につながった。

 さらに、みずほの経営陣はシステム障害の恐ろしさを分かっていなかった。そのため障害直後の初動が遅れ、対応が後手に回った。それから、ひとたび障害が発生した情報システムを正常な状態に復旧させることの難しさを知らず、システム部門に手作業によるシステム運用操作を強いた。これらの対応によって、システム障害がさらに深刻なものになってしまった。

 9年前のみずほ発足直後に発生したシステム障害も、その真因は今回と同じく、当時の経営陣にあった。経営陣がシステム統合のリスクを読み切れず、旧3行の担当者による主導権争いを抑え切れなかった。みずほ銀行の2度のシステム障害は、どちらも経営陣のIT軽視、IT理解不足に根本的な原因がある。

 にもかかわらず、みずほの経営陣に、この自覚はないように見える。みずほ銀行の西堀利頭取(当時)は、2011年3月のシステム障害後の記者会見で、システム障害の原因について「人的ミス」と繰り返した。人的ミスという言葉を借りるなら、9年前のシステム障害を教訓にできず、2度目の大規模障害を引き起こしたのは、経営陣の「人的ミス」にほかならない。

今こそ、みずほ銀行の失敗に学ぶべき

 経営陣のIT軽視と、それによる情報システムの老朽化、システム部門におけるミス増加は、みずほ銀行に限らず、多くの企業が抱える問題である。にもかかわらず、多くの企業の経営トップは、情報システムに関心を持たず、いまだに現場任せでいる。だからこそ、システム障害が繰り返される。

 企業や組織を支えてきた情報システムは現在、危険な状態に入りつつあり、早急に抜本的な対策を講じる必要がある。みずほ銀行の事例は、決して他人事ではない。多くの企業の情報システムもいつ問題が起きるか分からない。トラブルの内容によっては、みずほ銀行の例など比較にならないほどの実害が発生するリスクもある。

 ここで「システム障害」を、「企業の設備全般」として広く捉えると、みずほ銀行と似た構図によって生じた大トラブルがあることに気付く。福島第1原子力発電所の事故だ。

 費用がかかるのを嫌って経営陣が設備の刷新を怠る、東日本大震災の影響で老朽化が進んだ設備にトラブルが発生する、非常事態への準備が足りず緊急対応が後手に回る、経営陣が大胆な決断を下せずにトラブルの影響が広がる、一連の不手際によって顧客や世間からの信頼を失う、経営トップが責任を取り辞任する――。いずれも、みずほ銀行のシステム障害と東京電力の福島原発事故に共通して言えることである。

 大規模なシステム障害、もっと言えば「設備全般のトラブル」を防ぐためにも、ビジネスパーソンは今こそ、みずほ銀行の失敗に学ぶべきである。こう考え、日経コンピュータは「システム障害はなぜ二度起きたか みずほ、12年の教訓」を緊急出版した。一人でも多くの方々に、みずほ銀行のシステム障害をご自身の問題として考えていただきたい。

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