SEにとって“営業との関係”は難しい。ある意味では、営業との関係の方が顧客とのそれよりも難しいと筆者は思っている。それは同じ会社の人間同士なのに、職務や処遇などが大きく違うことに起因している。

 これまで述べてきたように、日本のIT企業では往々にして営業とSEの協業はうまく行っていない。しかも長年にわたってだ。きっと営業側にも問題があるのだろうが、もちろんSE側にも問題がある。事実、どこの会社でも対営業関係に無関心なSEや無頓着なSEが少なくない。そして営業との関係がギクシャクしている。特に販売・提案活動時にそれが顕著である。

 それでSEご本人は満足かもしれないが、会社としては困る。生産性も下がる。言うまでもなく、第一線のSEはそうあってはなるまい。

 だが、IT企業はおおよそSEの「対顧客関係」について指導や教育をしているが、「対営業関係」についてはほとんど何もやっていない。せいぜい「SEはもっとビジネス意識を持て」と号令をかける程度である。また、雑誌や書物などでも拙書『SEを極める』を除いてほとんど論じられていない。

 そこで前回、SEのみなさんに“営業というもの”を理解してもらうための手がかりとして、筆者は「営業の仕事や会社での営業の位置づけ」について書いた。今回はより突っ込んで「営業との関係のあり方」について言及したい。

試行錯誤や喧嘩を通して得た「営業との関係のあり方」

 営業は会社のビジネスの要である。それは前回述べた。営業担当者である彼ら彼女らが顧客にハード/ソフトやシステム開発サービスなどを売り、SEがシステムを作り、それを顧客に納入する。そして顧客の要望やクレームに対して、営業担当者が会社の代表として対応する。これらを彼ら彼女らがきちんと行わなければビジネスはうまく行かない。

 だが、営業担当者には十分な技術力がない。それを支援したり相談相手になったりするのは、何と言っても「同じ顧客を担当しているSE」である。両者がしっかり仕事をやらなければビジネスは伸びない。顧客にも迷惑をかける。

 では、「SEと営業との関係は本来どうあるべきか」「SEは営業とどんなスタンスで協業をすべきか」「どんな関係を会社は望んでいるか」――。きっとこれらの問題について、多くのSEの方々が悩んでいることと思う。筆者も現役時代に、数多くの営業担当者と仕事をして、いろいろと悩んだ。様々な試行錯誤もした。営業と喧嘩もした。

 そうした経験から、「これがポイントだ!」とつかんだものが何点かある。そのうち主な4点について説明する。悩んでいるSEの方々の参考になれば幸いである。