もうすぐ次期Windowsの「Windows 8(開発コード名)」が姿を見せる。「Windows 7さえまだなのに」と思う人もいるかもしれない。だが、Windows 7が発売されたのは2009年の11月。それからすでに約2年が経過。マイクロソフトは基本的に約3年おきにOSのメジャーバージョンアップを実施する計画で開発を進めており、順調なら2012年にはWindows 8が市場に登場する。そして、今年9月に米アナハイムで開催するBUILDという技術カンファレンスで、いよいよ詳細な内容を明らかにする予定だ

 Windows 8についての具体的な話は、まだマイクロソフトからほとんど明らかになっていない。いくつかのイベントで限定的にデモを見せた程度だ。ただ、これまでに少しずつ明らかになってきた情報からすると、Windows 8で目指す方向には大きく二つの流れがあると考えられる。一つは、より使いやすく便利に改良していくという、従来のWindowsのバージョンアップを継承する路線である。こちらは、Windows XPからVista、Windows 7と続けてきた流れの延長なので分かりやすいだろう。

 筆者がむしろ注目しているのは、残る一つの方向だ。それは、iPadやAndroidタブレットなどで注目を集めているタブレット市場を、Windows 8で本格的に狙うという新たな目的である。

タブレット市場をWindows 8で攻略

 マイクロソフトがWindows 8についてはじめて触れたのは、今年1月に米ラスベガスで開催されたInternational CES 2011。ここで、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏は、Windows 8の動作するアーキテクチャとして、これまでのx86/x64だけでなく、ARMも新たに追加することを明らかにした。

 ARMは、現在のスマートフォンやタブレットのほとんどで採用されているCPUアーキテクチャである。マイクロソフトがWindows 8でARMをサポートすることをいち早く表明した狙いは、当然のようにこの市場を狙ったものである。そして、スマートフォン市場については、Windows Phoneでカバーしていくことを表明しており、ARM版のWindows 8は残るタブレット市場を主要なターゲットとしていることがうかがえる。

 iPadの登場以来、これまでパソコンを使っていた作業の一部を、タブレット端末で処理している人が増えている。最近では、Androidを採用した端末も増えており、タブレット市場が拡大している。Windows 7を搭載したタブレット端末も登場してきているが、起動時間やバッテリーでの稼働時間といった面で、iPadやAndroid端末に対抗しきれていない。

 この原因はCPUアーキテクチャによる部分が大きい。x86/x64アーキテクチャの中では省電力を指向しているAtomでも、もともと組み込み向けを前提として開発されたARMと比べると、格段に大きな電力を消費してしまう。x86/x64アーキテクチャでしか利用できない現在のWindowsでは、どうしても対応できる内容に限度がある。そこで、新たにARMアーキテクチャをサポートし、iPadやAndroidに対して対等の条件で戦えるようにするのがWindows 8の大きな目的の一つである。