7月11日付で、『開発・改良の切り札 システム内製を極める』という書籍を発行した。題名に「システム内製」とある通り、必要とする情報システムを自分の手で開発した事例を集めた本である。

 これまで日経コンピュータに掲載したシステム内製事例のうち、直近のものを書籍に収録しようとして選び出すと30件を超えた。それらを分類すると以下のようになる。

システムを素早く、安く用意(システム内製など特集記事に登場した企業):アートコーポレーション、セイコーエプソン、セーレン、トライアルカンパニー、ノーリツ、フジスタッフホールディングス、ヤマハ発動機、ローム

業務の効率化を超え、戦略システムを内製(経営トップの明確な意志に基づき、独自システムを作った例。パッケージなどそもそもないので内製せざるを得ない):コマツ、ビジネス・ブレークスルー大学大学院、ヤマト運輸

システムを直し続ける体制を整備(システムは生き物であり、育てていくものである。次々にシステムを改良していくためには内製したほうがよい):ソニー生命、ソフトバンクモバイル、日本郵船グループ、八十二銀行、三井住友海上火災保険

手法とツールで開発生産性を向上(開発生産性が高い手法やツールを使うと内製がしやすい):鈴廣蒲鉾本店、成城石井、東急ハンズ、東邦チタニウム、ドトールコーヒー、三菱重工業、良品計画

基幹システムの全面刷新に挑み、人材も同時に育てる(内製をするには人がいる。人がもっとも育つ場所は全面再構築プロジェクトの現場である):クラレ、NTT、村田製作所

内製を推進するシステム部長たち(日経コンピュータの連載記事『システム部長の心得』に登場し、内製重視の方針を述べたシステム部長の談話):近鉄エクスプレス、国分、住友電気工業、トーハン、日本酒類販売、マックス

 書籍の出版を記念して、という訳ではないが、同様のテーマで7月28日にシンポジウムを開催する(『システムイニシアティブ2011 Summer ユーザー主体開発の実践』)。上記の企業の中から、八十二銀行、東急ハンズ、三菱重工業の内製推進者に事例発表をお願いし、どのように取り組んだのかをお話いただくことになっている。

 書籍には、筆者が最近、日経ビジネスオンラインというサイトで紹介した二つの事例も収録した。江東区と宮田眼科病院の実例である。

“全部不安”な初プロジェクト、若手3人はいかにして乗り切ったか(東京都江東区、3000人の勤怠管理システムを構築)

信じられますか? 看護師や検査員がシステムを設計する病院(宮崎県都城市の宮田眼科病院)

 本が出来上がった頃、書籍販売の担当者から「宣伝文を書いてほしい」と要請があった。ITproの『記者の眼』で何度か使った「ユーザー主体開発」という言葉を持ち出し、次のように書いた。

 「ユーザー主体開発」とは、情報システムを利用する人や企業が主体となってシステムを設計、開発することである。世界が変わり、社会が変わり、仕事が変わり、技術が変わった今、企業や組織はシステム設計や開発のやり方を変え、主体性を取り戻し、仕事に役立つシステムをこれまで以上に追求しなければならない。

 主旨は間違っていないと思うのだが、読み直すとなにやら高圧的な文章である。書籍に出てくる事例には苦労話が多く、登場するシステム部員達は使命感を持って、難しいプロジェクトに取り組み、乗り切っている。そうした事例をいくつも読んだため、宣伝文を書くにあたって、肩に力が入ってしまったようだ。