2011年3月11日の震災の直後、津波が被災地を呑み込む映像を見ながら思った。この凄まじい現実に対してITにいったい何ができるだろう。

 けれども、それは想像力に欠ける記者の的はずれな思い違いだった。

記事を書いていて感じた、復興へのITの力

 その日、震災後数時間もしないうちに被災者支援のためにITは動き出した。携帯電話とPHSの事業者5社はただちに災害用伝言板サービスを開始(関連記事)。Googleは消息情報サイト「Google Person Finder」を開設した(関連記事)。これらのサービスをAndroidから利用するアプリも作成された。ボランティア技術者たちによる震災情報集約サイト「sinsai.info」も立ち上がった(関連記事)。

 翌日12日は土曜、13日は日曜日だったが、ITによる被災者支援の動きは引きも切らず続いた。マイクロソフトは支援としてクラウドサービスWindows Azureを90日間無料提供(関連記事)。Amazon Web Servicesユーザー会は被災したサーバーなどをクラウド上で復旧するためのボランティアによる支援を開始した(関連記事)。数えるとITproでは3月11日から13日にかけ16本のニュースを掲載している。

 週が明け、計画停電も始まるが、企業による機材や義援金などの支援が本格化する。ボランティア技術者たちの活動も拡大し始めた。日本Androidの会では「payforwardingプロジェクト」が発足(関連記事)。現在までに「近くの避難所」、「ボランティアステーション」復興支援アプリをまとめたアプリ「BindPayforwarding」などをAndroidマーケットで公開している。

 18日には日本Androidの会関西支部が、19日から22日にかけてはインターネット関連企業の技術者などを中心としたプロジェクト「Hack for Japan」が支援アプリ開発イベントを開催。開催、京都、福岡、岡山、徳島の会場に合計数十人が参加、インターネットでは500人以上が参加した。Hack for Japanの第2回イベントは5月21日と22日の2日間、仙台・会津若松・高松・福岡・ロンドン・東京の6会場で開催された(関連記事)。第3回は7月23日と30日に仙台、会津若松、東京で開催を予定している。

復興に向けたスマートフォン向けのコンテストを開催

 ITproでは、ITによる被災者支援と復興のための動きをひたすら紹介してきた。微力ながら復興に役立てばと願うとともに、個人的には何よりITが復興の力になると実感できることが嬉しかった。

 そして今回、ITproで主催しているAndroidアプリケーションのコンテスト「Android Application Award(A3、エーキューブ)」の特別編として、「A3 Together(エーキューブトゥゲザー)」を開催できることになった。

 「被災者支援」「産業復興」「安心・安全」をテーマに、開発済みのサービスやアプリケーションのほか、アイデアや構想も募集する。日本だけでなく、海外からの応募も歓迎する。記事で紹介したもののほかにも、多くの被災者・復興支援サービスやアプリが開発されている。優れたアプリを広く紹介し、より多くの方に利用していただきたい。そして、優れたアイデアを実現に結びつけるお手伝いをしたい。そのことで、東北地方および日本の産業復興の一助になることを目指したいと考えている。皆さんの応募をお待ちしています。