ここ数カ月、スマートフォンに関するムックの編集にかかりきりだったため、スマートフォン関連のニュースにはとりわけ敏感になっていた。そんななか、東日本大震災がスマートフォンの製造にも大きな影響を与えていたことを知った。それも巷間言われているような「部品不足」という認識だけでは、(少なくとも筆者には)想像がつかなかったある部材の不足が一因だった。

スマートフォンの主役化によって多様化が進む

 昨年前半頃のスマートフォンの代名詞的存在といえば、米アップルのiPhoneが真っ先に挙げられるだろう。実際、他社のスマートフォンを「●●のiPhone」と表現していたユーザーを店頭で見たことがある。そもそも「スマートフォン」という言葉自体が、一般に普及しているとは言い難い状況だった。

 その後、スマートフォン市場は大きく飛躍した。Androidを採用するスマートフォンが数多くのメーカーから登場し、「スマホ」という短縮系の呼称も一般に浸透。店頭では従来型の携帯電話以上にスマートフォンが売り場を占めるようになり、少なくとも販売の現場では主客処(ところ)をかえた。

 携帯電話メーカー各社もスマートフォンへシフト。これまで以上に幅広いユーザーにスマートフォンを訴求すべく、「もう『●●のiPhone』とは呼ばせない」とばかりにデザインやカラ―リングに工夫を凝らした多様な機種を開発し、市場に投入し始めている。

 機能面では日本のユーザーに向けた“三種の神器”を搭載するスマートフォンが続々と登場。ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信といった従来型の携帯電話が搭載していた日本独自の機能がスマートフォンにも当たり前のように載り始めた。

 それも日本メーカー製スマートフォンだけではない。英ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが日本向けに開発した「Xperia acro」は、ワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信の各機能を搭載。韓国サムスン電子が日本市場に投入する「GALAXY S II」はワンセグ機能を備えている。

 閑話休題――。こうした多様化の道を歩み始めた日本市場のスマートフォンに、東日本大震災は大きな影響を与えた。具体的にはメーカー各社の生産状況や、それに伴う発売日の変更などの形で表面化するが、実はその原因の一つが外観を華やかに彩る塗装用部材の不足だったというのだ。