7月1日から始まる電力使用制限令を受け、多くの企業が節電対策を発表している。サマータイムを導入する企業、在宅勤務制度を導入する企業、輪番休日を導入する企業など、各社の事情に応じて様々な策を打とうとしている。

 例えばソフトバンクグループは汐留本社を対象に、3000人規模の在宅勤務に踏み切る(ソフトバンクが3000人規模の在宅勤務、今夏の節電対策で)。日本ヒューレット・パッカードでは、業務上困難な職種を除き、原則全社員で在宅勤務を認める。

 こうした今夏の勤務形態は、確かに電力使用制限令による特例だろう。だが、筆者は今夏だけの一時しのぎにせず、これを機にワークスタイルを見直し、柔軟な勤務形態の受容に踏み出すべきだと考える。

「働きやすい元気な日本」を再生のチャンスに

 高齢化社会の進展とともに、家族の介護と仕事を両立しなければならない社員も増えるだろう。IT業界では団塊世代の大量退職を「2007年問題」と呼んだ。2012年には団塊世代の先頭が、一般に高齢者と呼ばれる65歳に達する。年齢的にどうしても体調を崩しやすくなる。昨年、筆者の父親も67歳で体調を崩し、日常生活に手助けが必要になった。

 援助を必要とする家族がいると、これまで通りの仕事の仕方が困難になる。筆者自身も痛感した。援助の手間だけでなく、役所への申請や金融機関での手続き、税務署への申告など様々な作業を代行しなければならない。役所や銀行、税務署は平日昼間以外は窓口が開いていない。病院も外来は平日以外は受け付けないケースが少なくない。

 親の介護は今後、多くの団塊ジュニア世代が迫られる問題だろう。状況にもよるが、公的な介護サービスなどを活用すれば「しなければならないこと」は極端に多いわけではない。問題はしなければならないことの時間と今の仕事の時間が重なることだ。在宅勤務や出勤時間をシフトすることが可能ならば、両立できる可能性は高い。

 勤務形態を柔軟にできれば、子供を持つ女性に活躍の場を用意しやすくなる効果も見込める。より多くの人に仕事の場を用意するためにも、そろそろワークスタイル自体を見直すべき時期ではないだろうか。

 もちろん勤務形態を柔軟にするとシステム上の問題は出てくる。人事関連、ワークフロー、情報共有などは手を加えなければならないかもしれない。今夏の電力使用制限令への対応で、IT担当者がシステム改修に追われているという話も伝わってくる。

 しかし幸か不幸か、今夏までにシステム対応は事実上完了することになる。人事制度上の課題も今夏の“試行”で洗い出される。東日本大震災は非常に不幸な出来事だが、いつまでも下を向いているわけにはいかない。ワークスタイルを見直して「働きやすい元気な日本」を実現し、これを再生するチャンスに変えよう。