「データセンターが削減対象から外れるかどうかは分からない。医療機関や上下水道など、ほかにも除外対象とすべきといわれる施設は多い。特別扱いされる可能性は低いのではないか」。4月下旬、経済産業省のある担当者は筆者にこう話した。

 政府の電力需給緊急対策本部(現在の「電力需給に関する検討会合」)が2011年4月8日に発表した「一律25%削減」という節電方針は、データセンター事業者に衝撃を与えた。事業者の多くが、削減の対象となる500キロワット以上の大口需要家だからだ。

 いくつかのデータセンター事業者に聞いてみると「IT機器や周辺設備で25%もの消費電力を削減するなど困難だ」というところが多かった。というのも、データセンター事業者の多くが、顧客のサーバーを預かって運用する立場にあるからだ。契約電力の大半を消費する顧客のIT機器を、止めるわけにはいかない。

 日本の社会インフラとなりつつあるデータセンターは大丈夫なのか。この時点では大きな混乱が予想された。

 それから1カ月あまりで、状況は大きく変わる。経済産業省は2011年5月25日、電気事業法に基づく電力使用制限の具体的な内容を発表した。使用制限の対象となる期間は、東京電力管内が7月1日から9月22日、東北電力管内は7月1日から9月9日。契約電力が500キロワット以上の企業が求められる削減幅は当初言われていた25%ではなく15%となり、さらに一部の施設は制限緩和対象、すなわち15%も削減しなくてよいとされている。その緩和対象の一つに、「情報処理システムに係る需要設備」が挙げられている。

 データセンター事業者にとってはもちろん、事業者のサービスを利用する立場にある企業にとっても、これは朗報だ。無理な電力削減を求められたデータセンターは、電力ピーク時にシステムの一時停止をユーザー企業に要請しなければならないといった事態もあり得たからだ。削減幅が少なければ、通常通りの稼働が期待できる。

 東京電力や東北電力が電源供給能力を高めたことが、使用制限の緩和につながったようだ。政府によると東京電力管内における昨夏の電力需要は6000万キロワット。東京電力は7月末時点で、5380万キロワットまで供給能力を高める計画である。

 もっとも、これでデータセンター事業者の電力問題が解決したわけではない。すべてのデータセンターが一律で制限を緩和されるわけではないし、緩和されるところでも、今後、難しい舵取りが求められる局面が出てくるはずだ。具体的に見ていこう。

「故意による使用制限違反」には罰金

 まずは使用制限の考え方である。企業などの契約者が「15%削減」するといった場合、何から15%削減するか。それは、対象期間内の平日における、昨年の利用実績の利用実績の中で、最も電力を使った時間の電力値である。電力値は1時間単位で計測したものを使う。これを「基準電力値」と呼ぶ。

 例えばある契約者が昨夏、7月25日の14時から15時に500キロワットを使った実績があるとしよう。これが対象期間の昨年実績の中で最も多くの電力を使用した実績なら、ここから15%削減した425キロワットが、今夏の上限となる電力値である。

 大口需要家は今夏の削減対象期間で、平日の9時から20時の間は、常に電力を上限値以下に抑えることが求められる。大口需要家同士、または大口需要家と小口需要家が共同で電力を削減することも可能である。

 この使用制限は、電気事業法第27条に基づく措置である。使用制限を守らなかった契約者には、100万円以下の罰金が科せられる。ただし、「故意による使用制限違反」の場合である。

 データセンターは、この「15%」という削減率が緩和される可能性がある。どれくらい削減幅が緩和されるかは、需要変動幅による。需要変動幅とは、対象期間中の最大使用電力と最小使用電力の差のことで、この値が小さいほど、削減率は低くて済む。変動幅が10%未満なら削減率は0%で、昨年と同等の節電が求められる。変動率が10%以上15%未満なら削減率は5%、15%以上20%未満なら10%である。変動率が20%以上になると削減率は緩和されず、一般の大口需要家と同じ15%になる。