「8秒起動」「Webブラウザ専用」「データをすべてクラウドに配置する」―。パソコンの常識を覆す数々の特性を備えた米グーグルの新型OS「Chrome OS」が、いよいよ一般ユーザー向けに登場する。同OSを搭載したノートパソコン「Chromebook」を、韓国サムスン電子と台湾エイサーが欧米7カ国で6月15日から発売する予定だ(関連記事)。

 Chromebookは、グーグルが開発者向けイベント「Google I/O 2011」で「ノートパソコンのゲームを変える」と宣言するほどの重要な戦略商品である。ところが当初の販売地域に、残念ながら日本は含まれていない。こうなると、なおさら「グーグルのパソコン向けOSとは一体どのようなものだろうか。何とか手に入れて試してみたい」とうずうずしてしまう。いずれ多くの海外ユーザーがブログなどでChromebookの詳細な情報を報告するだろうが、購買意欲を静めるどころか、むしろ日本で買えないことへのフラストレーションが高まりそうだ。

 実はChromebookの発売より一足先に、今でもChrome OSを“体感”できる方法がある。グーグルは以前からChrome OSのオープンソース版である「Chromium OS」公開しており、誰でも無償でソースコードを入手可能だ。このソースコードを自分のパソコンでコンパイルし、OSのイメージファイルを作成して、USBメモリーに入れる。これで、USBメモリーからChromium OSを起動できるようになるわけだ。

 そこで筆者はこの方法でChromium OSを用意し、手元のノートPCで日常的に使いながら、実際の使い勝手や機能を味わってみることにした。使用PCは、手元にあるレノボ・ジャパンのタッチパネル対応ネットブック「IdeaPad S10-3t」(2010年4月発売)である。搭載CPUはインテルのAtom N450(1.66GHz動作)だ。標準でインストールされているWindows 7を起動せず、Chromium OSだけで2日ほど過ごしてみた。

 Chromium OS(Chrome OS)では、アプリケーションをローカルで動かすのではなく、メールの「Gmail」やスケジュール管理の「Google Calendar」といったWebアプリケーションを使う。つまりPCを基本的にインターネットに常時接続しておく必要がある。筆者の場合は、自宅では無線LANルーター経由でブロードバンド回線に接続。一方、通勤中やオフィスでは、モバイルルーターを利用し、3G回線経由でインターネットにアクセスした。

ネットブックでも10秒以内で起動

 Chromium OSは、パソコン向けでおなじみのWebブラウザ「Chrome」のオープンソース版「Chromium」に特化したOSだ。だから筆者は初め「通常のノートパソコンでChromeブラウザを使う場合と、使い勝手は全く同じだろう」と考えていた。

 ところが実際に使ってみると、従来のノートPCにない特徴をいくつか見つけることができた。最もインパクトが大きかったのは、初めてS10-3tにUSBメモリーを接続し、電源を入れた時だ。ディスプレイにBIOS起動時のロゴが表示されてから、ユーザー登録画面が表示されるまでの時間は、わずか9秒弱だった。

 その後も、起動からログイン画面の表示まで、ほぼ10秒以内で済んでいた。グーグルがアピールする「8秒起動」は、決しておおげさな数字ではないようだ。起動時間が短いと、電源をシャットダウンするか、それともサスペンドあるいは休止状態にするかといったことをほとんど悩まずに済む。ノートPCの使い方も少しずつ変わってくる。いつでも好きなときにさっと起動できるので、「今日の天気はどうなるのか」「この料理のレシピで足りないものは何だったかな」といった日常のちょっとしたシーンで、気軽にノートPCを開いて調べる気持ちになる。