中堅ITサービス会社のコムチュアが4月1日にソフトプロダクト販売の子会社コムチュアマーケティングを設立した。営業力を備えたITサービス会社になって、次なる成長を目指すためだ。「中堅・中小は、新しいことにチャレンジしなければ、変革する受託ソフト開発市場で生き残れない」との思いがあったのだろう。

 26年前(1985年)に設立したコムチュアは、受託ソフト開発から事業をスタートした。10年後、創業者の向浩一会長は「このままでは独自性がない」とし、大手ITベンダーのグループウエアやERPに関連したシステム開発を手がけ始めた。Javaの普及を予測して、その分野で先行するインド企業に若手技術者を派遣。技術習得に力を注いだ。2000年には都内にデータセンターを建設し、運用などアウトソーシング事業にも乗り出した。

年率30%弱の成長を目指すために

 こうしたなかで、コムチュアは2012年度(2013年3月期)に売上高100億円、営業利益10億円という意欲的な経営計画を作成した。2009年度の売上高は48億円弱、営業利益5億円弱だったので、年率30%弱の成長を遂げる目論見だ。いままで以上の速度で新規事業に取り組む必要がある。

 その施策の一つは、素晴らしいソフトプロダクトを開発するITベンチャーを発掘し、そのソフトプロダクトをベースにしたソリューション事業を展開すること。新たに販売会社を設立して取り組む。直接取引する顧客を増やす有効な手段にもなる。

 ただ、受託ソフト開発を中心にする多くの中堅・中小ITサービス会社は、大手IT企業からの請負や派遣が中心なので営業力が弱い。そこでコムチュアの向会長は、販売会社のコムチュアマーケティングの社長として、富士通の営業部長やソフトブレーンの社長を務めた松田孝裕氏を迎えた。同氏の営業やマーケティングに関するノウハウを取り込みながら、新市場や新規顧客を開拓する。同時に、技術者の意識を受け身から能動的へと変える。「ユーザーから言われたものを作る」という意識を捨て、「世の中の動向や顧客ニーズを見ながら自らの考えでソリューションを作り上げる」という考え方を浸透させる。

 コムチュアマーケティングは年内に20種程度のソフトプロダクトを取り扱う計画で、有力ソフトプロダクトを持つITベンチャーなどとの交渉を進める。親会社のコムチュアがすでに日本IBMのノーツや米セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスの契約を結んでいるほか、コネクトワン(モバイル端末向けセキュリティソフト)やサイファー・テック(PDFファイルの暗号化、複製防止ソフトなど)、アクセラテクノロジ(検索ソフトなど)といったITベンチャーのプロダクトも扱い始めている。ワークフローなど自前のプロダクトを含めて、クラウドサービス化も進めていく。

ITベンチャーの営業力不足を補う

 コムチュアには、約200人のIBMノーツ関連技術者や約50人のSAP製ERP関連技術者など500人近い社員がいる。そうした技術者と協力して、ITベンチャーらのプロダクトをユーザー企業の要望に応えるソリューションに仕立てる。ユーザー社内の既存システムと連携させる案件も期待できる。

 ITベンチャーとの関係強化を図る目的で資本関係に踏み込むこともある。コネクトワンには20%近い資本を出資した。一方で、ITベンチャーからコムチュアマーケティングへの出資を受けて、深い関係を築く計画もある。販売組織を別会社にした意味がそこにもある。「ITベンチャーは素晴しい商品を持っているが、営業力がなかったり、ソリューション力がなかったりする。当社がそこを担当する」(松田氏)。これによりITベンチャーはプロダクト開発に専念でき、コムチュアは新規顧客の獲得につなげられる。