Androidの勢いは増すばかりだ。米IDCが3月29日に発表した市場予測によると、2011年のスマートフォン出荷台数は前年比5割増しになる見込みで、Androidのシェアはそのうち4割に達するという(関連記事)。iPhone/iPadはもちろん、長い間スマートフォン市場をけん引してきたSymbianも抜き、トップに立つ見込みである。

 その一方で、かねてから言われてきた“Androidの混在問題”が、いよいよややこしくなってきた。Androidの混在は、大きく二つある。一つは、バージョンの混在。もう一つは、ディスプレイの混在だ。

バージョンの混在

 Androidは、バージョンアップのペースが速い。国内初のAndroidスマートフォン「HT-03A」に当初搭載された「1.5」がリリースされたのが、2009年4月。その後、「1.6」(2009年9月)、「2.1」(2010年1月)、「2.2」(2010年5月)、「2.3」(2010年12月)と続く。わずか1年半余りの間に、これだけのバージョンアップが繰り返された。この2月には、タブレット向けの「3.0」もリリースされている。HT-03Aの発売から2年も経っていないのに、今、国内でユーザーが使用しているAndroidにはこれだけの種類があるのである(3ページ目の表1表2)。

 バージョンアップに伴う機能強化は歓迎されるべきことだが、これだけ早いペースでの混在はアプリケーション開発者にジレンマをもたらす。最新バージョンを使えば豊富な機能を使えるが、旧バージョンのユーザーを切り捨てることになる。切り捨てられたバージョンを搭載する端末は、その魅力が毀損されることになるため、Android端末の実質的な寿命にも影響を及ぼす可能性がある。

 3月29日、Android版の「Firefox 4」がリリースされた。発表資料の中で「Androidの標準ブラウザーに比べて3倍高速」とうたっている。そのFirefox 4が対応するOSは「Android 2.0以降」である。2009年7月に発売された「HT-03A」や、2010年6月に発売された「IS01」は、Firefox 4の恩恵にあずかることができない。発売後2年を待たずに“レガシー化”してしまうなど、陳腐化が激しいパソコンの世界ですら考えられないことだ。

 バージョンは、「発売時点のバージョンが何か」「どこまでバージョンアップが可能か」の2点を見る必要がある。前者についてはカタログを見れば分かる。同じ時期に発売されたものでも、機種によって異なるバージョンを採用しているものがあることには注意が必要だ。一般的には、電子マネーやワンセグ、赤外線通信などフィーチャーフォン的な機能を盛り込んでいるものほど、一つ前の世代のバージョンを使っていることが多い。

 後者は、購入時点では分からないことが多い。IS01のようにOSのバージョンアップを断念したとあるタイミングで表明されることもあるし、果たしてバージョンアップされるのかどうか分からないままメーカーの頑張りを待ち続けることもあるだろう。

 もっとも、バージョンアップのペースが早いのはAndroidに限った話ではない。競合のiPhone/iPadに搭載されるiOS(旧iPhone OS)は、2008年7月に発売されたiPhone 3Gに搭載されていた「2」から、「3.0」(2009年6月)、「3.1」(2009年9月)、「3.2(iPad専用)」(2010年4月)、「4.0」(2010年6月)、「4.3」(2011年3月)という具合に進化している。バージョンアップのペースが速いのは、iOSもAndroidと同様なのだ。iPhone 3Gは「4.3」へのバージョンアップがなされなかったことから、3年を経ずにレガシー化した。このスピード感もAndroidと同様である。同様でないのは、もう一つのディスプレイの混在の方だ。