「中小ソフト開発会社が集まって、みんなでクラウドビジネスを始めよう」。みんなのクラウドの松田利夫社長は、受託ソフト開発の需要が激減するなかで、中小ソフト開発会社が生き残るために自らクラウド事業に打って出ることを勧める。そこで、松田社長が社長を務めるきっとエイエスピーなどが設置したSaaSパートナーズ協会のメンバーを中心に、中小ソフト開発会社のクラウド事業の立ち上げを支援する目的で、みんなのクラウドを2010年12月に設立した。

 多くの中小ソフト開発会社の経営者が受託ソフト開発事業の将来性に不安を抱くものの、「何をしたらいいのか分からない」と悩んでいるのが実情だろう。「24時間365日、働いても儲からない」と嘆く経営者もいる。確かに、国内の受託ソフト開発市場は縮小する一方で、中国などへのオフショア開発が急増している。そこに、クラウドサービスが急速な勢いで普及したため、売り上げがこの3年間で5割減った中小ソフト開発会社も少なくない。

 みんなのクラウドを設立した理由がそこにある。松田社長は「セールスフォース・ドットコムやグーグルのアプリケーションを売るだけでいいのか。自分で顧客名簿を持てないし、集金もできない」と問題点を指摘し、自らの存在価値を高めるうえでクラウド基盤を持つ必要性を訴える。

 中小ソフト開発会社の経営者は「クラウドに参入する資金力はないし、技術力もない」と思うだろう。だが、数万円の安価なサーバーとオープンソースソフト(OSS)の組み合わせで、クラウド事業を始めることはできる。みんなのクラウドはこのことを教える。ハードやソフトの販売、システム構築とは異なるサービスビジネスなのだ。

 具体的には、みんなのクラウドへの出資会社にクラウド基盤構築の技術ノウハウを無償で提供する。SaaSなどサービスの販売方法も伝授する。中小企業でも「クラウドのオーナーになれる」(松田社長)ように、みんなのクラウドへの出資金は1万円にした。50社、100社へと増やすためである。現在の資本金は100万円で、出資会社は30数社になる。

100社集まれば1000台規模のクラウドに

 出資会社を増やす理由は二つある。一つは、サーバー台数を増やせること。10台のサーバーしか調達できない中小ソフト開発会社が100社集まれば、合計台数は1000の規模になる。各社が構築した共通基盤を連携させ、他社の持つサーバーをバックアップ用として使うこともできる。顧客が増えたら他社のサーバーを借りればよい。もっと増えたら米アマゾン・ドット・コムや有力企業のデータセンターを活用する方法もある。みんなのクラウドの基盤技術には、アマゾンがWebサービスで利用するOSSを使っている。