2011年1月25日、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)情報共有部会での講演のため人形町へ出かけた。この町に来るのは2~3年ぶりだ。都会と下町が同居したような、独特の雰囲気のあるところが気に入っている。気軽に入れるおいしい料理屋が多く、以前はもっぱら夜の会食のために来ていた。

 情報共有部会は積水化学コーポレート情報システムグループの原さんが部会長をしており、その依頼で講師を引き受けることになった。テーマは「最近の企業ネットワークの動向とスマートデバイスの活用」というものだ。この日は40人あまりの方が出席しており、5~6人のグループに分かれてテーブルを囲んで座っていた。大学のゼミナールのような雰囲気だ。皆さん、有名企業の方ばかりで年齢的には30代が多いようだった。筆者の講演の前に、ガートナーとNTTドコモの人が講演した。

 さて、今回は情報共有部会のテーマでもあるコラボレーションにおいて求められる一番大事な機能は何か、スマートデバイスをその機能の実現に使うにはどうすればよいかを述べたい。

超ダイナミックなコラボレーション

 2011年1月某日、提案期日の迫ったプロジェクトで最終的な見積もりとその前提条件をレビューするため、主要メンバーでミーティングをすることになった。朝8時半、品川オフィスにいる筆者を含む4人はそれぞれのノートパソコンを持って予約不要なミーティングスペースに集まった。オフィス内はすべて無線LANなので、どこでもパソコンをイントラネットに接続できる。

 営業のA氏がケータイで出張先にいるB氏のケータイに電話をかける。つながると、ケータイをハンズフリーに切り替えてテーブルの真ん中に置く。「Bさん、おはようございます。これからミーティングを始めます。いいですか?」「いいですよ、準備できています」。準備ができている、というのはB氏がリモートアクセスでログインしており、プロジェクトの共有フォルダに入っている見積もり資料を開いている、という意味だ。オフィスにいる4人も同じ資料をパソコンで見ている。電話会議の始まりだ。

 資料を見ながらどんどん議論し、終わったら議事メモをメールで飛ばしてミーティング完了だ。無線LAN、軽いノートパソコン、ケータイ、共有フォルダを使った、こういうダイナミックな電話会議をしょっちゅうやっている。東京のプロジェクトだけでなく、大阪や福岡のプロジェクトを現地のSEや営業と進める際にも、このダイナミック電話会議はとても役立つ。数千万円もするテレプレゼンスなど、現場で戦うプロには不要なのだ。すぐ使えて、手軽で、実用に耐えるものであればいい。

 このダイナミックな会議の中にコラボレーションで最も重要な機能が入っている。それは「音声による会話」と「資料共有」だ。この二つさえあればプロジェクト・メンバーが離れた場所に分散していてもコラボレーションできる。

10インチの画面は電話会議向き

 ノートパソコンの代わりにスマートデバイスを使うとこのようなダイナミック会議のユーザーを広げ、もっと機動的、効果的な使い方ができる。筆者はiPadでそれを実現し、ソリューションとして提供している。ユーザー層を広げられる理由は、軽くて、安く、ユーザーインタフェースが易しいからだ。持ち歩くには重いと言われるiPadも、1キロ程度ある軽量ノートよりも軽いしかさばらない。価格も半分程度だ。パソコンが苦手な経営者や営業担当者にも指先だけで操作できるユーザーインタフェース(UI)はなじみやすい。

 もう一つ、iPadが会議での利用に適する属性をJUASでのNTTドコモの人の講演で気付かされた。ちょっと面白い見方だと思って記憶に残った。それは「7インチのタブレットは自分で見るためのもの、10インチは人に見せるためのもの」という見方だ。ディスプレイサイズで用途を分け、7インチは可搬性に優れ、メールやスケジューラ、電子書籍を読むことに適するとする。10インチは相手にコンテンツを見せるのに適し、プレゼンや店頭支援に向いているとする。7インチの代表としてNTTドコモのGALAXY Tabを、10インチの代表としてiPadを挙げている。

 筆者がiPadを見て、これで電話会議をできるようにしようと思ったのもディスプレイが大きいので会議資料を表示して2~3人で見ながら打ち合わせをするには十分と思ったからだ。ただ、10インチが可搬性に問題があるか、というとそうは思わない。前述のように可搬性を追求した軽量パソコンより軽いからだ。現にパソコンの代わりにiPadを営業担当者に持たせている企業がある。