日本のIT企業には、ハードウエアメーカーやソフトウエアメーカーをはじめとして、独立系のシステム開発会社やシステム子会社、メーカー系の関連会社、運用会社などいろいろな企業がある。そして、それらの企業のSEの組織を見ると、(a)おおよそ受注後のシステム開発や保守のみ行うSE組織、(b)システム開発・保守だけでなく営業と販売・提案活動も行うSE組織、(c)営業と一緒に販売・提案活動のみ行うSE組織、(d)運用専門のSE組織――など様々なSE組織がある。
だが、その中で圧倒的に多いのは(a)受注後のシステム開発や保守のみを行うSE組織だ。いわゆる、SE一人ひとりが原価として勘定されるコスト部隊でもある。言うまでもないが、元請企業が受注し、その後のシステム開発や保守を行う2次請け、3次請けのIT企業もこの部類である。
これらのSE組織は一般に営業部門が受注したシステム開発や保守を行い、何千万円、何億円という売り上げ目標を持っている。そして一般にSEを稼働率で管理している。
ただし、売り上げ目標はあっても販売目標は持っていない。販売・提案活動は、営業部門の要請があれば行うが、その活動は大体リーダークラスのSEが行う。一般のSEはシステム開発や保守のみを担当し、販売・提案活動をすることはほとんどない。
筆者はこのSE組織の在り方に疑問を持っている。「日本のIT企業のSEの使い方はこれでいいのだろうか?」「SE組織の在り方をもっと考えるべきではないか?」と思う。今回はこれについて筆者の考えを述べたい。
「開発・保守だけやるSE組織」が生む大損失
筆者が「SEにシステム開発や保守だけをやらせるSE組織の在り方」に疑問を持つ理由は2つある。1点目はこうだ。「顧客に信頼され、顧客をつかんだSEが営業と共に提案活動を行うと販売活動が上手くいく」はずなのに、なぜSEに販売・提案活動をやらせない組織を作っているのか。2点目は「提案活動に強いSEには、SEが長年抱えている受身意識、技術偏重、ビジネス意識の乏しさといった傾向が見られない。能動的でビジネス意識も高くリーダーシップがある。プロジェクト管理にも優れている」ということだ。
この2点は、どう考えてもIT企業にとって大きなメリットがある。メリットがあるのに、どうしてSEは受注後の仕事を請け負うのみで、販売・提案活動に参画させないのか。このSE組織の在り方は、IT企業にとって非常にもったいないと筆者は思う。
読者の皆さんの意見はどうだろうか。納得いかない読者の方もいると思うので、それについて概略を説明する。