「市販のテストツールはかゆいところに手が届かない」「使いこなせるようになるまでに時間がかかる」「そもそも価格が高すぎる」――。システム開発の現場を回ると、テストツールに対してこんな声が聞こえてくる。

 なぜテストツールは現場に根付かないのか。これにはいろいろな理由がある。「必要な機能を備えていない」というのがその代表だろう。現場ではテストデータの作成に時間がかかっているのに、それを支援する機能がない場合がある。「操作を覚えるのに時間がかかる」というのもよく聞く話だ。一連の操作をマスターするために、専門のインストラクターによるトレーニングを必要とするツールもある。

 ツールを使うと「テストスクリプトやデータのメンテナンスが大変」という場合もある。テストの効率を高めるには、テストスクリプト(テストの手順を記述したコード)やテストデータを使い回すことがポイントとなる。メンテナンスに時間がかかるようでは、逆にテスト工数が膨らみかねない。

 テストツールを導入したくても「導入コストが高い」「ライセンス形態が使いづらい」という理由であきらめているケースもあるかもしれない。市販のテストツールは、ライセンスの範囲が「1プロジェクト」に限定されることがあり、投資対効果が見合わないという判断だ。こうしたことから、テストツールを自作している現場も少なくないはずである。

現場への浸透がこれから始まる

 実際、テストツールの利用率を見ても、現場にはまだまだ浸透していない状況がうかがえる。日経SYSTEMSが創刊した2006年に実施した「開発支援ツールの利用実態調査」では、テストツールの利用率は、単体テストが31.9%、結合テストが14.3%、システムテストが20.1%にすぎない。毎年実施しているその後の調査でも、利用率に大きな変化は見られなかった。

 こうした状況にもかかわらず、テストツールの提供ベンダーは、どこも今がビジネスチャンスだと捉えている。システムへの品質要求がかつてないほどに高まっており、テストの重要性が改めてクローズアップされてきたからだ。ベンダー各社は主要製品の拡充を進めている。米Oracleや米Hewlett Packardのように、ツールベンダーを買収して市場開拓に乗り出したところもある。

 もちろん、利用率が低いからこそテストツールが利用される可能性があることは分かる。しかし、現段階では、現場とテストツールの間に何らかのギャップがあることは間違いない。開発現場では「使いたいけどいろいろな壁があり、結局使わない」という判断だ。そもそも現場ではテストツール自体にあまり必要性を感じていない可能性もある。

テストツールはどこに向かうべきか

 それでも現場におけるテストツールの活用は急務である。設計ツールやプログラミングツールに比べると、テストツールの利用率は明らかに低い。プロジェクトの短納期化とシステムの高品質化の負担はテストフェーズにのしかかる。テストツールを使ったテストの生産性と品質の向上は待ったなしなのだ。

 それだけに、現場の意識とテストツールのギャップを何とか埋めたい――これが、記者の最近の思いである。

 そこで日経SYSTEMSとITproは共同で、開発支援ツール徹底調査 テスト編を実施している。この調査では、テストツールの利用に焦点を当てて、現在の問題点やツールのあるべき姿を浮き彫りにするのが狙いである。

 これまで毎年実施してきた調査との最大の違いは、利用していない方にもご意見を頂戴している点だ。現在テストフェーズで負担になっている作業は何か、どんな点が取り除かれればテストツールを利用したいかなどを聞いている。

 一方、既にテストツールを利用している方には、具体的に自動化している作業を詳しく聞いている。ひと口に「テスト」といっても、その種類はさまざまだ。今回の調査では、「単体テスト」「結合テスト」「システムテスト」というフェーズ別の利用実態をさらに深堀りし、それぞれのフェーズでテストデータの作成を自動化したのか、テストの実行を自動化したのか、テスト結果のレポート化を自動化したのかなどを詳しく聞いている。

 これらのアンケート結果から、現場におけるテストの問題点とテストツールに不足している点が浮かび上がるはずだ。これにより、ベンダー視点ではない“現場が求めるテストツール”の機能強化の方向性を示したい。ぜひ皆さんも、アンケート調査にご協力いただければ幸いである。調査の実施期間は2011年3月31日まで。調査結果については、日経SYSTEMS本誌とITpro上で改めて報告する予定だ。