厳しい経営状況に陥っているNECに、コンピュータ事業を再生するチャンスが訪れた。2011年1月に発表した中国最大手パソコンベンダーのレノボとの提携強化で、最大の懸案事項であるグローバル展開に道筋をつけられる。

 火を見るより明らかなことだが、軸足を日本国内に置いたままのサーバーやパソコン、関連ソフトウエアの事業は縮小を余儀なくされる。NECのパソコン売り上げは、最盛期の半分近い約2000億円になってしまった。利益確保も容易ではない。欧米ITベンダーの製品販売に頼ってもグローバル展開への突破口は開けない。

5年間で、売上高が5兆円から3兆円強へ大幅ダウン

 まずはレノボとのパソコン合弁事業を軌道に乗せる必要がある。中途半端な施策では現状を脱しきれないので、例えばNECは設計を担当するとしても、開発・製造以降を全面的にレノボに任せる。そして、レノボとの信頼関係を築いたうえでサーバー事業などへと関係を発展させていく。あるNEC関係者は、「DECやハネウェルがどうなったのかを考え、同じ轍を踏まないこと」と、生き残りためにレノボとの関係強化を推進すべきだと説く。

 問題は、NECの「危機感のなさ」にある。「このまま何もしなくても大丈夫」と安心し、世の中の変革に取り残されていることに気づいていないかのようだ。NECのコンピュータ事業についてこの20年間を振り返ると、ハードウエアからシステムインテグレーション(SI)中心のサービス事業へとシフトしていった。その間、いろいろな状況の変化があったが、結果として世界に通用するハードウエアやソフトウエアを開発できず、国内中心の事業になってしまった。

 あるNEC役員は「パソコンやPCサーバーの国内シェアはナンバー1だ」と自慢するが、それは世界市場の1%とか2%のシェアでしかない。しかも、日本のIT市場規模は2008年に世界の約16%を占めていたが、2010年に約5%、2015年には約3%に低下すると言われている。じり貧になるのは目に見えている。実際、NECの売り上げはここ5年間で約5兆円から3兆円強へと落ち込んでいる。

過去の失敗を乗り越え、グローバル展開できるか

 なのに、NECは経営トップが変わっても思い切った構造改革に踏み切れなかった。国内に大きな需要があったからでもある。構造改革が遅れた結果、主力事業の半導体を非連結化し、固定費を大幅削減しなければならなくなった。守りの施策しか打ち出せていない。自らの力で構造改革ができなければ、外部の力を活用するしかない。その点でもレノボとの関係強化には大きな意味がある。