システム開発プロジェクトでは、見える化をする前と後にある「落とし穴」に気をつける必要がある。日経SYSTEMS 2011年2月号(1月26日発行)の特集記事「プロジェクトの見える化」の取材・執筆を振り返って、こう感じている。

 特集記事では、プロジェクトマネジャー(PM)が、問題発生をいち早く察知するのに有効な「見える化」の工夫を紹介している。進捗管理表や課題管理表などを用いてプロジェクトを見える化していてもどうしても問題発見が遅れてしまう。それを防ぐのには、情報を「集める」「読み取る」「共有する」という三つの工夫が有効であるとまとめた。ここでは、見える化の前後を話題にしたい。

落とし穴1:忙しい現場から情報が集まらない

 落とし穴の一つ目は、「見える化」のとっかかりにある。「見える化に必要な情報がメンバーからリアルタイムに集まらない」というものだ。「設計書の作成といった本来担当する業務で忙しく報告が後回しになりがちになる」「自分が担当している作業で問題が発生したが、なんとか報告前に解決させたい」といったメンバーの事情や心情からくる。

 いずれも、「プロジェクトで決められた役割を果たしたい」というメンバーの気持ちの表れ。報告の遅さをとがめるのではなく、「メンバーはそういう事情や心情を持つものだ」ということを踏まえてメンバーへの配慮が欲しい。

 取材でもベテランPMは、このあたりをかなり気にしていた。本来の業務より現状の作業報告が後回しになりがちになる対策として、三井情報のPM、山崎要氏(ビジネスソリューション事業本部 カスタマーソリューション一部 部長)は、現場であるルールを設けている。それは「メンバーは自分の作業管理のために作成しているToDoリストのファイルをそのままプロジェクト内の共有サーバーに上げる」というものだ。PM向けに報告するのにわざわざ資料を作成する手間を省く配慮だ。「共有サーバーに上げてもらえるようになったので、メンバーが抱えているタスクを把握しやすくなった」と、山崎氏は効果を語る。

 発生した問題の報告が遅れがちになる対策として有効なのが、「一人でできることは限られている。周りの力を借りて解決しよう」といった、早めに報告するメリットを、打ち合わせなどの場を通して常にアピールし続けること。これは丸紅情報システムズの隠居浩利氏(プロジェクト管理部長)が現場で実践している取り組みだ。もちろん問題発生の報告を受けたら、的確な対策を立案したり指示したりするなど、解決に向けたPMの率先した動きは欠かせない。