2010年10月から12月にかけて例年になく講演依頼がたくさんあり、11回の講演をこなした。その中で山場だったのが11月11日、12日に東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催されたNECのプライベート展示会「iEXPO2010」での講演だ。「次世代WAN、iPad/iPhoneで革新する企業ネットワーク」と題した講演は、1カ月以上前に満席になっていた。

 講演は、話しはじめが大事だ。話す側と聞く側の気分がさっと盛り上がって、講師である筆者は楽しく話せ、聞いていただくお客様は面白く聞けるムードを作りあげるのだ。

 この講演での最初の一言は決めていた。「皆さん、私と同じ今の時間にサッカー日本代表の岡田前監督が講演しているのを知っていますか?」(ほとんどの方が手を挙げた)。「岡ちゃんの話より私の話の方が面白いに決まっているので、この講演を選択した皆さんは大正解です」(笑い)。岡田前監督の集客力が桁違いなのは言うまでもない。しかし、眼の前にいる多くの人が筆者の講演を選んでくれたことはありがたい。岡ちゃんの話より面白いかどうかは分からないが、皆さん、何度も笑いながら聞いていた。

 さて今回は、この講演の話題の一つでもあった「スマートデバイスの同質化」について述べたい。講演の雰囲気を出すため、書き言葉でなく、話し言葉で書いていこうと思う。

“コピー商品”かと思うほどハードは同質化

 半年ほど前は、iPhone/iPadの圧倒的優位が当分続くだろうと思っていました。しかし、二つの体験がきっかけで考えが変わりました。一つは10月に幕張で開催された「CEATEC JAPAN 2010」という展示会で、NTTドコモの「GALAXY S」というAndroid搭載スマートフォンに触れたことです。CEATECには数年ぶりに行ったのですが、まず驚いたのは海浜幕張駅のホームが人であふれており、ホームから改札まで5分もかかったことです。IT業界は不振なので、さほど人出はないだろうと思っていたのですが予想外でした。スマートフォンと3Dテレビが人を呼んだようです。

 会場について、まっしぐらにドコモのブースへ行きました。実は都心でのお客様との打ち合わせまで1時間あまりしかなく、会場にとどまれるのはせいぜい15分でした。GALAXY Sの展示コーナーを見て呆然としました。20台あまりの端末を並べて自由に触れられるようにしているのですが、それぞれの端末に5~6人の行列ができていたのです。行列に並んで待っていたのでは打ち合わせに遅れます。こんなとき、皆さんならどうしますか? 私は先頭で触っている人の横へ進み、『すみませんが時間がないので一緒に見させてください』と頭を下げて端末を奪い取り、触らせてもらいました。最後に手に持って写真も撮らせてもらいました。若い人でしたが、日本人はやはり親切ですね。

 実際、GALAXY Sを見て触って分かったこと。“iPhoneそっくりじゃないか”。ホーム画面のアイコンの数は同じ。電話などのアイコンのデザインは酷似しています(図1)。大きさはほぼ同じで、ちょっと軽い。写真をフリックするとiPhoneと同様、飛ぶようにめくることができる。

図1●当面のライバルと目される「iPhone 4」「GALAXY S」「IS03」の3機種<br>GALAXY Sは画面やアイコンなどがiPhoneにそっくり。
図1●当面のライバルと目される「iPhone 4」「GALAXY S」「IS03」の3機種
GALAXY Sは画面やアイコンなどがiPhoneにそっくり。
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