2011年1月、ソニー・エリクソン・モバイルコミュケーションズが、高性能イメージセンサーなどを搭載した次期Androidスマートフォン「Xperia arc」を発表した。筆者はまだ実機に触れていないが、そのスペックを見て、iPhoneからの乗換えを本気で検討するようになった。

 特徴はいろいろある。OSにソースが公開されたばかりのAndroid2.3を採用、最薄部が8.7mmと薄い、4.2インチのマルチタッチの液晶パネルを搭載、テレビで実績がある「BRAVIA Engine」を含む表示技術「Reality Display」により視認性が優れている、テレビなどの大画面に対して保存コンテンツだけでなくホーム画面のHDMI出力が可能なこと --などだ。

 中でも注目なのは、内蔵カメラのイメージセンサーに、デジタルスチルカメラで実績がある、裏面照射型構造を持つCMOSセンサー技術「Exmor R」を採用したことだ。これはソニー厚木(半導体事業本部)が開発したセンサーである。Xperia arcには携帯やスマートフォン向けの「Exmor R for mobile」を使っている。

 「裏面照射型」の技術的な解説は省くが、要するに、暗い場所でもきれいに撮れる技術である。この裏面照射技術を用いたビデオカメラをソニーは昨年販売。それまでの民生用ビデオカメラの常識を覆す画質でマニアたちを驚かせた。iPhone 4のカメラでも裏面照射が採用されているが、Xperia arcが採用する裏面照射センサーには、(1)集光効率アップによる高感度、(2)画素間でのクロストークを低減した画素構造、(3)独自回路技術による低ノイズ--といった特徴がある。

 つまり、新カメラの最大の特徴は画質が良いことである。スマートフォンカメラに画質は求めないという人が大半だろうが、それは、画質面で携帯電話やスマートフォンのカメラが一般的なデジタルカメラに遠く及んでいないことも理由である。スマートフォンのカメラは500万画素、800万画素、のように高画素化が進んでいるが、画素数を高めるほど、処理データ量は多くなるが、画質は良くなるわけではない。実際、スマートフォンのカメラの画質は、同じ画素数のデジカメと比べても雲泥の差がある。

 カメラの基本画質は、イメージセンサーの撮像素子面積でほぼ決まる。センサー以外の信号処理の影響も大きいが、1画素当たりのセンサー面積が最も重要である。スマートフォンや携帯電話のように、小さいセンサーに画素を詰め込みと、感度が弱くなり、よほど明るい場所でなければきれいに撮れない。少しでも暗い場所では、電気的なゲインアップで明るくするが、ゲインアップは画質を悪化させてしまう。解像度を高めるために画素数を多くした結果、画素の面積が小さくなり、結果的に画質が悪化する。こうした本末転倒な現状を打破するのが、小さいセンサーでも感度が高い「裏面照射」である。

 スマートフォンの画質がデジカメに近づけば、スマートフォンをデジカメ代わりに使うことができる。ほとんどの人は通常のスナップであればスマートフォンで十分満足できるようになるのではないか。