ITコストを下げ、スケーラビリティーを向上させ、IT資産の陳腐化を防ぐ。そうした目的を持ってパブリッククラウドサービスの活用に踏み出す企業が相次いでいる。ガートナー ジャパンが2010年8月に無作為抽出した国内企業を対象に実施したインターネット調査によると(有効回答674社)、SaaSを既に利用している企業は26.0%。PaaS、IaaSはそれぞれ1割前後だった。

 とはいえ今のところ、パブリッククラウドを利用するのは、ECサイトや情報系システムが多いようだ。業務系システムへの適用は、まだこれからというところだろう。そんななかで、注目に値する動きがある。

 東急建設、竹中土木、日本国土開発、TSUCHIYAの建設業4社が、NECとともに「C-BARX」というパッケージをベースに基幹業務システムのパブリッククラウド化を進めている。システムの共同利用によるコスト低減の効果をテコにして、これまで4社がそれぞれアドオン開発していた独自機能を標準化しようとする取り組みだ。

ユーザー4社で標準化を話し合う

 始まりは、2008年末に開かれた、C-BARXのユーザー会だった。その席で、C-BARXの利用企業である東急建設、竹中土木、日本国土開発、TSUCHIYAの4社のシステム担当者が集まり話し合った。話題は「IFRS(国際財務報告基準)へのコンバージェンス対応など、今後見込まれる会計制度の変更に伴う会計機能の改修コストをどうするか」である。

 発生するコストは、C-BARXのバージョンアップ料だけでは済みそうになかった。4社とも自社の業務に合わせて、大幅なアドオン開発を行っていたからだ。建設業では一般に、企業によって業務のやり方がそれぞれ異なるので、基幹業務システムをスクラッチで開発したり、パッケージをベースに大幅なアドオン開発をしたりするのはよくあるケースである。決して4社が特殊なのではない。

 ただし、アドオン開発費を捻出する余裕はない、という点で4社の事情は同じだった。そこで対処策として持ち上がったのが、アドオンとして開発していた、各社の独自機能を共通化し、パッケージベンダーであるNECに次期バージョンの標準機能として開発してもらうことだった。4社は「どこまで共通化できるか分からないが、検討してみよう」と、NECの協力を取り付けた上で、2009年10月に合同の検討会を立ち上げた。「この時点では、まだどうなるか分からない感じだった」と東急建設の寺田憲治氏(管理本部 情報システム部 次長)は振り返る。