iPadが上陸した後、NTTドコモのGALAXY Tab、ソニーのReader、シャープのGALAPAGOSといったタブレット新製品の発売が相次ぎ、すっかり影が薄くなった米Amazon.comのKindle。ところが、筆者はこの期に及んで、Kindleに熱中し始めた。サイズと重量がほど良く、機能とサービスのバランスが実用的。まだ日本語書籍は数えるほどしか販売されておらず、日本語入力も困難だが、青空文庫やIPAフォントを活用した有志のおかげで、面白い日本語環境が出来上がりつつある。

日本を含め100カ国以上で3G通信無料

Kindle 3G+WiFiをブックカバーのようなバインダに挟んで使っている。こうすると持ちやすい
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 筆者が使っているのは、2010年8月に発売された「Kindle 3G+WiFi」。Amazon.comが日本向けにも1万9213円(本体1万6470円+送料1828円+輸入関税915円)で直販している(2010年12月12日現在)。サイズはGALAXY Tabとほぼ同じだが、もっと薄くて軽い。6型の電子ペーパーディスプレイ(ソニーReaderと同じく米E Ink製)とキーボード、それに日本語フォントを備える。

 うわさに違わず、電子ペーパーは非常に見やすい。まるで紙に印刷した感じに見える。初めて梱包を解いたときは、てっきり、スタートガイドを印刷した保護フィルムがディスプレイ表面に貼ってあるのかと思ったくらいだ。原理上、いったん表示した画像の保持に電力を必要としないので、電源を切っても画面は消えない。公称バッテリ駆動時間は、無線通信機構オフで1カ月、オンでは10日。

 だが、最も魅力を感じたのは、実は電子ペーパーではない。日本を含む100カ国以上で3G通信(HSDPA/GSM方式)が無料という点だ。この本来の目的はいつでもどこでも電子書籍を入手できるようにすることだが、付属のWebブラウザでも常時3G網が使えるのである。

 このWebブラウザは、iPadと同じWebKitレンダリングエンジンを基にしたもの。電子ペーパーの特性上、ビデオ再生は無理だが、電子新聞の閲覧などには十分使える。ただし、操作メニュー上では「Experimental」という項目に分類されており、永続的にサポートされるのかどうかは分からない。この分類には、MP3プレーヤーとテキストスピーチ機能も入っている。

メール送信でファイルの形式変換と転送を実行

 Kindleは、他社製品と同様に、付属のUSBケーブルでパソコンに接続すると、リムーバブルディスクとして扱える。いくつか現れるフォルダのうち「documents」フォルダに、購入した電子書籍が収録されている。自分で作成したPDF文書なども、ここにドラッグ&ドロップすれば、Kindleで読めるようになる。

 面白いのは、パソコンからKindleへの手軽な転送手段として電子メールを使えることだ。ファイルを電子メールに添付して「ユーザー名@free.kindle.com」あてに送ると、しばらく後に到着し、他の電子書籍に交じってファイルが現れる。スパム対策も講じており、あらかじめ許可する送信元アドレスをKindle管理サイトで登録しておく必要がある。

 転送可能なファイル形式は、PDF(.pdf)とテキスト(.txt)のほか、Microsoft Word (.doc、.docx)、RTF(.rtf)、HTML (.html、.htm)、画像(.jpeg、.jpg、.gif、.png、.bmp)、ZIP(.zip)。必要があれば、Kindleで表示できるように自動的に形式変換も行う。