この連載ではこれまで「SEが長年抱えている“SEの受身意識”“ビジネス意識の低さ”“技術偏重”“SEのモノ扱い”“チームワークの弱さ”などの問題は自分たちで解決せよ。そのためにはSEは顧客とビジネスに強くなり、SEをモノ扱いするビジネスのやり方や横暴な営業担当者と闘え」と述べた。そのために筆者は現役時代に何をどう考え、どう闘ってきたか。今回はそれについて紹介する。

なぜ闘おうと考えたか

 筆者の時代はメインフレームの時代だった。筆者のSE人生は、あるメーカーの大阪支店から出発した。若いころはコンピュータ導入が比較的遅れている業界の企業を数多く担当した。当時のSEを取り巻く顧客や社内の状況は、およそ次の様な状況だった。

 (1)ユーザー企業では多くの顧客がSEを頼りにしていた。当時の顧客企業はコンピュータの使用経験がほとんどないから、メーカーのSEを頼りにせざるを得なかったからである。

 (2)一方、当時のIT業界は同業他社との販売合戦が激しく、それに勝つためにIT企業の営業担当者などは顧客に「マシンを買っていただければSEとプログラマーを何人つけます」「常駐させます」などという風潮があった。酷いケースでは「某社のコンピュータは優れているからそれに勝つためには何人つけよう」などといってSEの頭数をそろえ、それを売りものする企業さえあった。

 ユーザー企業の方も「お宅は何人SEやプログラマーをつけるんだ」とIT企業に質問し、その人数をベンダー選定の重要項目にしていた企業もあった。筆者は幸いコンピュータの導入では後進の業界だったせいか、そんなSEの“モノ扱い”にはあまりぶつからなかったが、当時はこれが一般的な風潮であった。そして先進業界の大手顧客ではこんなことが日常茶飯事だった。

 (3)営業担当者にはいろんな人がいた。中にはSEに相談もなく勝手に提案を作り、契約後はSEに丸投げする人、「これでは売れないからもっと安いシステム構成にしてくれ」とSEに注文つける人、また「これはSEにやらせます」と勝手に顧客に約束する人もいた。技術的に問題がないケースならまだしも、そうでない場合もあり、SEは頭に来ていた。だいたいこんな状況だった。このようなSEと営業担当者の関係は、今も同じようなものだろう。