「中堅企業向けの売り上げを、2009年度の1390億円から2015年度に2000億円にする」。こう意気込むのは、富士通の生貝健二副社長だ。大手企業向け売り上げが伸び悩んでいるなかで、中堅企業市場は2009年度に約1兆3000億円に成長し、年率1.3%で拡大するという。この市場を開拓しなければ、富士通の国内売り上げを伸ばせない状況にある。

 富士通はかつて中堅企業市場で20%程度のシェアを持っていたが、ここ数年間は10%程度と低迷している。第一の理由は、この市場に関連する部署/拠点が子会社を含めて50カ所近くあり、グループ全体を統括する責任部署がなかったこと。第二は、大手企業向けを優先するあまり、販売会社が中堅企業に売りやすい商品作りで遅れをとったことである。

 そこで、黒川博昭社長時代の2006年に中堅市場開拓を推進する中堅ソリューション事業本部を設置し、機能集約を図ろうとした。ERPソフト「GLOVIA smart(グロービアスマート)」の開発・販売体制も整備したが、シェアを伸ばせなかった。中堅企業市場の理解が不足しているからだとみられている。

 オフコンからオープンへの移行で希薄化した販売会社との関係を、再び密にするための有効打も見出せなかった。しかも、富士通グループ内で中堅企業市場を重点的に攻めている旧富士通ビジネスシステム(FJB)の業績が低迷してきた。

FJBを軸に中堅企業向けの組織を再編

 それを打開するため、富士通は2009年8月にFJBを上場廃止とし、2010年10月に富士通内にあった中堅企業向けの商品企画・開発、販売会社支援組織をFJBに移管した。社名もFJBから富士通マーケティング(FJM)に変更した。実は、この計画の実行は1年遅れになった。販売会社や社内の一部から旧FJBへの機能移管に反発があり、その説得に時間がかかってしまったからだ。推進者だった野副州旦社長の解任もあった。

 FJMの古川章社長は「この1年間は、販売会社へのサポート体制整備とサービス商品作りに力を注いできた」と話す。「GLOVIA smart きらら」がその目玉で、会計や人事、給与、生産管理などをSaaSで提供する。ハードと複数のソフト、運用管理サービスなどを組み合わせたセット商品も用意した。富士通グループが開発したアプリケーションソフトを、販売会社が扱いやすいよう整備もしてきたという。「パートナーにどんなものが必要なのか、パートナーの意見を聞きながら開発を進め、支援体制を整えてきた」(古川社長)。