「3~4年後にはスマートフォンとフィーチャーフォン(従来型の携帯電話端末)の販売台数を半々にしたい」――。2010年度第二四半期決算の席上、NTTドコモの山田隆持社長はぶち上げた。「スマートフォンはパケットARPU(ユーザー当たりの平均収入)を引き上げる大本命」と位置付ける。

 NTTドコモの2010年度の端末販売台数は1870万台の計画。過去の実績では2008年度の総端末販売台数は2013万台、2009年度は1804万台と、1年間で2000万台弱を売り上げている。山田社長の計画が実現すれば、3~4年後にはドコモ1社だけで年間1000万台近いスマートフォンを売りさばくことになる。

 iPhoneを抱えるソフトバンクモバイルは、以前からNTTドコモ以上にスマートフォンの販売に力を入れている。2010年秋冬端末では、Android端末を6機種も投入するなどスマートフォンへの力の入れようが伺える。au(KDDI)も2010年後半からAndroid端末を複数投入。スマートフォンへの傾倒を強めている。スマートフォンが“当たり前の端末”になる日は、そう遠くなさそうだ。

 必然的にスマートフォンのユーザー層も変わっていく。スマートフォンの「大衆化」だ。

 現在のスマートフォン利用者は「ITを使いこなしたい欲求」が強い層が多いだろう。パソコンのブラウザにFirefoxやGoogle Chromeを利用して、プラグインの導入などで自分好みの使い勝手を実現しているような人たちだ。筆者自身もそうだが、カスタマイズを苦に思わない。むしろ楽しいとすら思う。

 しかし今後は、そこまでITへの使いこなし欲求が高くない層もスマートフォンを持つようになるだろう。イメージとしては、パソコンのブラウザは初期導入されていたInternet Explorerをそのまま使う。ホームページはパソコン購入時にデフォルトだったYahoo!やメーカーサイトのまま――という層だ。

iPhone歴3カ月の妹が追加したアプリは、mixiとTwitterだけ

 スマートフォンの大衆化は意外に大きな変化をもたらすかもしれない。3カ月前、筆者は妹にiPhone 3Gをプレゼントした。iPhone 4を購入して、使わなくなったからだ。つい最近、妹にiPhone 3Gを見せてもらったところ、3カ月間で新規にインストールされたアプリは、mixiとTwitterだけだった。

 mixiアプリとTwitterアプリをインストールしたのも、「サイトにアクセスしてみたら『こっちの方が便利』と書いてあった。そのリンクをたどってみただけ」という。App Storeで能動的にアプリを探したわけではない。

 妹は仕事ではパソコンを使うが、自宅ではあまり使わない。音楽を聴いたり、調べ物が必要になったりしたときにブラウザを立ち上げるくらいだという。友人とのメールには、パソコンよりも携帯電話を使う。今までスマートフォンには縁遠かったが、これから利用し始める層に近い行動様式といえそうだ。

 フィーチャーフォンを使いこなしていた層にとっては、「アプリ=ゲーム」というイメージが強い。スマートフォンを使いやすいものにするために、わざわざ手間をかけてアプリを探そうという発想があまりない。「いろいろなアプリを試して自分好みの環境を作る」という行動は、おそらくパソコンを使いこなすユーザー特有なのだろう。

 スマートフォンのユーザー層の変化に対応するためか、携帯電話事業者が販売するスマートフォンが変わってきている。今までは、メーカーが海外でも販売する端末(グローバル仕様端末)をそのまま売るケースがほとんどだった。ところがNTTドコモやauの2010年秋冬モデルでは、日本独自の機能であるモバイルFeliCaやワンセグを搭載したローカル仕様のAndroid端末をラインアップに用意する。

 NTTドコモの山田社長は「パソコンを使いこなしている人はグローバル仕様を好むと思う。しかし、今後はiモード端末を使いこなしていた方々がスマートフォンに移行していく。そうした層にとって使いやすい端末としてローカル仕様の端末を用意した」とローカル仕様端末を用意する狙いを説明している。