私は、これまでに10年ほど、基本情報技術者試験の対策講座で講師をしてきました。受講者の中には、十分に知識があるのに、なかなか合格できない人がいます。試験問題に慣れていないから、合格点に達しないのです。出来ないのではなくて、慣れていないのです。問題をスラスラ解ける講師は、頭がいいのではなくて、試験問題に慣れているだけです。試験問題に慣れると、問題解法のテクニックが見えてきます。代表的なテクニックを紹介しましょう。お役に立てば幸いです。

午前問題は、過去問題を数多く解いて、要求される知識の深さを知る

 情報処理技術者試験の過去問題は、すべて公開されていて、情報処理推進機構のWebページからダウンロードして入手できます。午前問題は、とにかく過去問題を数多く解いて練習しましょう。そうすることで、要求される知識の深さがわかるからです。例として、以下の問題をご覧ください。

ISO14000シリーズに関する記述として、適切なものはどれか。

ア 個別の作業ではなく、事業全体を対象としたプロジェクトをマネジメントする方法について既定した国際規格である。
イ 産業廃棄物やエネルギー消費など、地球環境の悪化につながる問題を改善するために企業などが取り組む環境保全管理に関する国際規格である。
ウ ソフトウェアを取引する者同士が、開発工程名・用語・概念などを異なって用いると問題が生じるため、それらの標準(共通の物差し)を設けた国際規格である。
エ 品質マネジメントシステムの国際規格であり、製品そのものに適用されるのではなく、製品やサービスを提供する体制を整えた供給者であることを証明する。

 基本情報技術者試験では、ISO9000シリーズとISO14000シリーズがよく出題されます。要求される知識は、ISO9000シリーズが品質管理の規格であり、ISO14000シリーズが環境保全の規格であるということだけです。どっちが「品質」で、どっちが「環境」なのかを覚えておけばよいのです。この問題のテーマは、ISO14000シリーズですから、選択肢の中で「環境」という言葉が入っているイが正解です。

間違っても減点されないので、必ずどれかを選ぶ

 基本情報技術者試験は、午前問題、午後問題とも、すべてマークシート形式の選択問題です。学生時代には、「わからない場合は、でたらめに選ばず空白のままにしなさい。でたらめに選んだら減点するぞ!」という厳しい先生がいたかもしれませんが、基本情報技術者試験では間違っても減点されません。したがって、わからなくても、自信がなくても、空白のままにせずに、いずれかの選択肢を選んだ方が得策です。私は、受験者を送り出すときに「元気にマークシートを塗ってこい!」と声をかけています。

午前問題は、後ろの問題から着手する

 基本情報技術者試験の午前問題は、2時間30分で80問に回答します。多くの受験者が、「回答時間が10分~15分ほど余ったので、見直しをする余裕があった」と言っています。時間は十分に間に合うのですが、問1、問2、問3…と前の問題から順番に解くのではなく、問80、問79、問78…と後の問題から解くことをお勧めします。なぜなら、前の方にあるテクノロジ系の問題の中には、回答に時間がかかるものがあるからです。そのような問題で時間を使い過ぎてしまうと、気が弱い人はパニックに陥るかもしれません。できる問題もできなくなってしまいます。そういう人は、後の方にあるマネジメント系やストラテジ系の問題を先に解いた方が、精神的にも余裕が持てるでしょう。もしも、前から順番に解きたいなら、時間がかかりそうな問題は飛ばして、後で解くようにしましょう。

午後問題は、設問を先に見る

 午後問題の内容は、どれも長文読解問題のようなものです。2~3ページの説明文を読み、何問かの設問に回答します。「午後問題でも時間が余った」という受験者は、ほとんどいません。もしも、「試験時間が10分しか残っていないのに、まだまったく手を付けていない問題がある。もうダメだ」という状況になってしまったら、説明文を一切読まずに、設問を見てください。設問の中には、説明文を読まなくても回答できるものがあるからです。私は、「午後問題には全滅防止機能がある」と感じています。全滅とは、その問題が0点になることです。もしも、0点が多発したら、出題者は困るでしょう。「こんな問題では、誰も答えられないじゃないか!」とバッシングされるでしょう。そこで、0点にならないように、やさしい設問が用意されているのです。

代入法なら、短時間で正解を得られる

 午前問題の回答時間は、1問あたり約2分しかありません。もしも、数学っぽい問題で、まともに式を導いていたら、2分ではできません。例として、以下の問題をご覧ください。

ある自然数xを2進数で表現すると、1と0が交互に並んだ2nけたの2進数1010・・・10となった。このとき、xに関して成立する式はどれか。

ア x + x/2 = 22n
イ x + x/2 = 22n - 1
ウ x + x/2 = 22n+1
エ x + x/2 = 22n+1 - 1

 こういう問題に遭遇したら「代入法」を使いましょう。代入法とは、変数nに特定の値を想定することです。もっともシンプルなn=1でやってみましょう。それで答えが1つに絞れないなら、さらにn=2やn=3でやってみればよいのです。代入法なら、2分で答えを得られるはずです。

 この問題は、n=1で答えを見出せます。n=1のとき、x=10(2進数)=2(10進数)です。選択肢の左辺はどれもx+x/2ですから、2+2/2=3(10進数)です。したがって、右辺のnに1を代入して値が3になるイが正解です。