「プログラマはもう要らない」。大手物流会社のシステム子会社で新技術の社内展開を進めるマネージャーはこう言い切る。ここでいうプログラマとは、企業情報システムの開発プロジェクトでプログラムを作成する担当者を指す。ある開発ツールを検証したところ、こうした役割の要員は不要との結論に至ったというのだ。

 このマネージャーは記者に対して、ツールを導入した場合の効果をこう語る。「様々な開発言語を知っていて、バグのないソースコードを24時間、延々と高速で書き続ける。そんなスーパープログラマを雇ったのと同じ効果が得られる」。

 同社が検証したのは「GeneXus(ジェネクサス)」という開発ツールである。ご存知の方はまだ多くないかもしれない。一口に言えば、アプリケーションの自動生成ツールである。データ項目や画面、業務ルールといった設計情報をGeneXusの表記法で入力すると、ソースコードとテーブル定義情報を自動生成する機能を備える。

「以前のCASEツールとは違う」

 GeneXusは南米生まれのツールである。ウルグアイのITベンダーであるアルテッチが1989年にバージョン1を開発した。バージョン2で、ソースコードとテーブル定義情報を開発者が一切記述しないという意味での「100%自動生成」を達成。以降、手作業の開発に比べて20倍の生産性となるようにバージョンアップを重ねている。最新バージョンは「X(テン)」だ。

 このGeneXusが今、日本で広まり始めている。導入実績はすでに100社を超えた。2010年7月にドトールコーヒーが店舗向け食材の受発注システムをGeneXusで刷新するなど、基幹系システムでの導入も増えている。

 ここまで読んで、思わず眉をひそめる読者も少なくないだろう。コードを自動生成、ましてやそれが100%となると「本当か?」と疑問に思うのが普通の感覚ではないか。過去にも、その手の効果をうたった製品は多数存在した。

 前職がSEの記者も同じ気持ちだった。CASEツールの自動生成機能を結局、使いこなせなかった経験がよみがえり、「まゆつばではないか」と思っていた。

 そこで、GeneXusを使っているユーザーや検討中のユーザー、GeneXusでシステム開発を受託するITベンダーに直接取材し、素直に疑問をぶつけた。すると、ほとんどの取材先が「最初は信用していなかった」と打ち明けた。一方で各社は「検証してみると、確かにアプリケーションを自動生成できる。今までとは違うと実感した」と口をそろえた。

 こうしたGeneXusにまつわる動きを追って、日経コンピュータの2010年9月29日号で記事をまとめた。ユーザー企業各社がGeneXusを導入した理由と効果、課題などは記事を見ていただきたい。ここではGeneXusが広まると日本のシステム開発の現場をどう変えていくのかを予想する。