HTMLが十数年ぶりに改訂される。現行のHTML4.01が策定されたのが1998年。次世代のHTML5は目下、W3C(World Wide Web Consortium)において標準化作業が進行中で、2012年に標準が勧告される予定となっている。

 まだ規格が固まっていない段階ではあるが、Internet Explorer(IE)、Firefox、Chrome、Safari、Operaなど主要ブラウザのすべてが、既に対応に取りかかっている。今のところブラウザごとに対応状況に差があり、米国のWebデザイン会社Deep Blue SkyによればSafariと、レンダリングエンジンに同じWebKitを採用しているChromeが一歩抜けている印象だ。だが、IEやFirefox、Operaも次期版の目玉としてHTML5対応をうたっており、その差は早晩、縮小していくはずだ(関連記事1関連記事2関連記事3)。

 HTML5の最大の特徴は、文書の構造を示すタグの標準だけでなく、プログラミング言語JavaScriptのAPIを規定することにある。JavaScriptを駆使することで、表現力が強化される。例えば、ブラウザ上でマウスを操作して絵を描けるようにしたり、画像や動画を組み合わせて動的にWebページを構成したりするといったことが可能になる。ユーザーやWeb管理者に役立つ各種機能も追加される。消費者調査会社のクロス・マーケティングは、HTML5の新機能「アプリケーションキャッシュ」と「ローカルストレージ」を利用して、オフライン環境でも回答できるアンケートシステムを構築している(関連記事)。

 もちろん、アドビシステムズのFlashやマイクロソフトのSilverlightなどプラグインを活用すれば、現在のブラウザ上でも同じようなこと(あるいはそれ以上のこと)ができる。しかし、プラグインがなくても実現できる機能は、HTML5に統合されていくのが自然な流れだ。これから何年かかけて、HTML4で作成したWebサイトの作り直しが始まるだろう。HTML5は特定のベンダーに依存した技術ではなく、標準規格として位置づけられる。そのため、Webサイトとして採用しないという選択肢はあり得ない。

 アップルがiPhone/iPadでFlashをサポートしなかったことから「HTML5 vs Flash」という構図で語られることもある。しかし、アドビ自身「FlashとHTML5は対立するのではなく、共存し、連携することによってユーザーにメリットがある」というスタンスを取っている(関連記事)。マイクロソフトも「SilverlightとHTML5は補完関係にある」としており、ITベンダーの歩調は完全にそろっていると言ってよい。

 移行の過程では、規格の混在というやっかいな問題も避けては通れない。今でさえ、ブラウザごとの表示の崩れを整えるのは、Web管理者にとって面倒な仕事の一つ。HTML4と同5の規格の混在は、Web管理者の仕事を増やすだろう。特に、リリース後10年近く経っており、セキュリティや互換性の問題が指摘されているにもかかわらずいまだにシェアが多いIE6をサポートするかしないかで、その負荷は大きく変わる。

 ITproも、当事者として、またメディアとして、様々な形でHTML5への取り組みを進めていく。具体的には、11月下旬をめどに、HTML5を駆使した新しい電子媒体をリリースする計画を進めている。同じ電子媒体でありながら、従来のWebサイトとは違った新しいメディアの可能性を感じられるものになると思う。現在、ITベンダーのジークスと仕様を詰めている。その進ちょくは、折を見てまた報告していきたい。

 また、日経コンピュータは2010年6月23日号で「HTML5の衝撃」という記事を掲載し、その仕組みや機能を詳しく解説している。ITproでは来週、その記事を特集扱いでWebサイトに転載する。HTML5についての詳細は、そちらをご覧いただきたい。