ラストワンマイル。ユーザー宅と最寄りの通信事業者の局舎を結ぶ加入者回線のことだ。地方などでは、このラストワンマイルがネックとなって光ファイバーを引けないお宅も依然としてある。

 筆者も最近、似た経験をした。ラスト“ワンメートル”が問題となり、光ファイバーを引けなかったのである。今回は、その顛末についてご紹介したいと思う。

「新サービスに加入できる」と心が躍る

 きっかけは、筆者が住むマンションの管理組合からの通知だった。「NTT東日本のフレッツ光への申し込みが可能になった」というのがその内容だ。

 筆者の住むマンションではそれまでも、構内のメタル配線部分をVDSL方式で中継する最大100Mビット/秒の「GyaO 光 マンションVDSLタイプ」(9月1日より「GyaO 光」は「spaaqs(スパークス) 光」に名称変更予定)という光インターネット接続サービスへの加入が可能で、実際に筆者も同サービスを利用していた。

 今度は、NTT東日本が各戸まで光ファイバーを引き、下り最大200Mビット/秒の「フレッツ 光ネクスト マンション・ハイスピードタイプ」を契約できるという。従来のGyaO 光にさほど不満があったわけではなかったが、ハイスピードタイプのNGN(光ネクスト)が契約できると聞き、筆者も早速申し込んでみることにした。

 フレッツ 光ネクストとISP(インターネット・サービス・プロバイダ)を合わせた月額利用料金はGyaO 光のそれに比べて割高だったものの、加入電話をIP電話サービスの「ひかり電話」に変更すると、月間のトータル金額はあまり変わらない。負担増もほとんどなく、新サービスに加入できるということで心は躍った。

 とある土曜日の昼下がり、光ファイバーを開通させるべく、NTT東日本の工事担当者がやってきた。そのときの様子を記す前に、筆者の住むマンションの構内配線の状況を説明しておこう(図1)。このマンションでは、最寄りのNTT局からのメタル線は、1階に設置された主配線盤(MDF)と各階に設置された中間配線盤(IDF)を経由して各住戸につながっている。ごく一般的な配線の方法だ。

図1●筆者の住むマンションにおける構内配線の状況
図1●筆者の住むマンションにおける構内配線の状況
配管はもちろん壁の中や天井裏に隠れている。今回は、このメタル線の経路を使って光ファイバーを各戸に敷設しようとした。まずは「隣家との分岐点」からワイヤーを入れて実際に光ファイバーを引けるかどうかの検査を実施した。

 マンションは築17年。マンションが出来上がった当時には当然、ブロードバンドサービスなどなく、構内には光ファイバーやLANの配線はない。

 こうしたタイプのマンションでは、通常は構内配線の両端にVDSLモデムを置き、VDSL方式を使った光インターネット接続サービスを利用する。前述のように、このマンションでもGyaO 光 マンションVDSLタイプは利用できていた。

 今回は構内のメタル配線の管路を使い、MDFとIDFを経由して光ファイバーを直接各戸に引こうというわけである。