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「一番楽しい仕事」は何か

2010/08/19
谷島 宣之=コンピュータ・ネットワーク局編集委員

 一口にIT(情報技術)の仕事と言ってもその中身は様々だが、ITpro読者の皆様にとって一番楽しい仕事は何だろうか。経験を積むにつれ、楽しい仕事は変わってこないだろうか。20数歳から仕事を始め、60歳で引退するとして、30数年間の長きにわたって仕事をするわけだから、楽しいと感じる仕事が年齢によって変わってもおかしくはない。

 「若いころはプログラミングが楽しかったが、最近は提案書作りが面白くなってきた」という人もいれば、「特定業種のアプリケーション開発と保守を長年担当してきたが、今は要求通りの応答性能を出せるシステム基盤の設計にやりがいを感じる」という人もいるだろう。

 もちろん、「何年やってもプログラミングが一番楽しい」というのであれば、それはそれで大いに結構な話である。逆に「ITの仕事をしてきて面白いと思ったことは一度もない」という人がおられるかもしれない。そうした方に僭越ながら申し上げると、拙文を読むのはここで止めていただき、人生設計に注力されたほうがよい。

編集の仕事の面白さを振り返る

 ITの仕事はしたことがないので、ここから先は自分の仕事、すなわち「編集」について考えてみる。25年前に記者になった当初は、何と言っても取材が一番楽しかった。どちらかと言うと初対面の人と話をするのは苦手であり、記者が務まるだろうかと心配していたが、やってみると様々な話を伺うことができて勉強になったし、何より面白かった。

 あちこちに行って話を聞くだけならこれほど楽しい仕事はないが、当然原稿を書かないといけない。国語には自信があったが、仕事で原稿を書いてみると、なかなか思うように書けず、当時のデスク(記者の原稿を読んで直す人)から「何回書いても下手だねえ」としばしば言われていた。

 当たり前だが、原稿は締切日までに提出しないといけない。面白がってかなりの件数の取材をこなしているので、書くことはたくさんある。しかし締切日までに所定の分量にまとめ上げるとなると難しい。駈け出しのころは必ず徹夜仕事になった。

 今であれば自宅で原稿を書いていても、電子メールという文明の利器でデスクにさっと送れる。ところが当時はメールどころかワードプロセサも使っていなかったから、編集部に泊まり込んで原稿用紙を前に鉛筆を握りしめて、うなっていた。がらんとした編集部に深夜独りでいると、段々息苦しくなってくる。もっともこれは空調設備が夜間止まっていたせいでもある。

 文章を書くのは嫌いではないから、逃げ出したいと思ったことはない。それでも「デスクが出社してくる午前10時まで、あと8時間。残りが300行だから、1時間に40行書いていけば十分間に合う」と計算し、その2時間後に「残り290行を6で割ると」と再計算していると、息苦しさがさらに増してくる。

 さらにもう2時間経つと「残り280行を4時間で書き上げるのは無理だ。デスクに言い訳するためにも睡眠をとったほうがよい」と考えるようになり、編集部の椅子を集めて並べ、その上で2時間ほど眠ったりした。

 翌日デスクに「昼過ぎになんとか出します」と頭を下げ、午後3時過ぎになってようやく原稿を提出する。その原稿用紙は2時間くらいして、デスクが書き入れた赤字で真っ赤になって戻ってくる。それを解読し、書き直す。自分とデスクが相互に書き入れていくと最後は読めなくなってしまうので、その場合は清書する。

 書き直した原稿がデスクを通過すると校正紙(ゲラと言う)が出る。それを読んだ編集長から注文が付く。デスクと相談して注文に応え、編集長が了承すると一段落となる。ほっとはするものの、あまりにも疲れていて達成感はあまりない。

>>「考える仕事」は楽しい
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