携帯電話は通話、メール、ネット上のコンテンツ検索・閲覧などに使われている。通話料やデータ通信料以外に、実はその背後で、携帯電話を介してかなりの額のお金が流通している。この携帯電話を介して行われる購買、いわゆる「携帯流通マネー」の額はどれくらいだろうか。

 日経BPコンサルティングは、「携帯電話“個人利用”実態調査」を2010年6月中旬に実施した(調査概要は末尾を参照)。個人がどのように携帯電話を使っているかに焦点を当てた調査で、2000年から実施しており、今回が16回目。その調査結果をもとに携帯流通マネーについての年間総額を算出した。その結果、携帯流通マネーの市場規模は総額で1兆8153億円となった。

携帯流通マネーの8割が“物販系”

 携帯流通マネーの額を算出するために、この調査では、携帯電話で使っている各種コンテンツの利用料金を尋ねた。取り上げたコンテンツは、オンラインショッピング/ネットオークション、おサイフケータイを使った買い物や乗り物利用、さらに音楽、電子書籍、ゲーム、動画である。

 これらの回答をもとに、携帯流通マネーについての年間総額を算出したところ、1兆8153億円という数字が得られた()。

図●「携帯流通マネー」市場規模
図●「携帯流通マネー」市場規模

 携帯流通マネーの市場規模を算出したのは今回が3回目。前回調査(2009年6月)と前々回調査(2008年6月)でも同様の利用料金を尋ねた。前回調査では年間総額は1兆6931億円だった。1年間で携帯流通マネーの総額は7.2%増加した。

 前回調査で得られた携帯流通マネーの総額は、前々回調査と比較すると1.7%減だった。設問では最近1年間についての各種コンテンツの利用金額を尋ねている。前回調査の調査時期は2009年6月上旬で、ちょうど2008年9月のいわゆるリーマン・ショックによる金融危機、景気後退の時期に当たっていた。個人消費もこの影響を受け、結果的に携帯流通マネーも減少したようだ。

 最近の景気は完全には回復したとはいえないものの、今回調査の結果をみると、携帯流通マネーの総額は2012年にも2兆円規模に拡大する可能性がある。

 ほかの産業をみると、年間で2兆円程度の規模があるのは、美容業が2兆218億円、警備業が1兆8758億円(いずれも総務省が5年ごとに実施している「サービス業基本統計調査」、2004年6月調査)、書籍・雑誌の取次ルートでの推定販売金額が1兆9356億円(出版科学研究所、2009年)である。また、ソフトバンクモバイルの売上高が1兆7238億円(2010年3月期)と、携帯流通マネーの年間総額に近い。