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記者の眼

「育てる」GE、「育つ」グーグルのウソ

小林 暢子=日経情報ストラテジー 2010/07/14 日経情報ストラテジー

 2010年5月、米国で「ASTD(American Society for Training & Development、米国人材開発機構)」のカンファレンスが開かれた。人材育成や組織開発をテーマにした世界最大規模のイベントで、企業の人事部門の担当者や人事関係のコンサルタントらが世界中から集まる。今年のカンファレンスに参加した組織コンサルティング会社、アジアリープジャパンの池田哲平代表から興味深い話を聞いた。

 池田氏がASTDに参加する目的は、最新の組織開発や人材育成手法の情報を得るのはもちろん、各国の人事業界の専門家と直接話してその興味や問題意識を探ることもあるそうだ。今年、多くの参加者たちが話題にしていたのが「グーグル対GE(ゼネラル・エレクトリック)」だったという。もちろん、GEが検索エンジンを開発するわけではない。人材育成において、これからの主流がGE流になるか、グーグル流になるかという話題だ。

 人材育成の分野で、長い間モデル企業とされてきたのがGEだ。同社は次世代の経営リーダーから若手のマネジャーに至るまで様々な階層の社員に研修プログラムを提供し、「クロトンビル」と呼ぶ大規模なラーニングセンターなどで長期にわたる教育を行っているのは有名だ。ジェフリー・イメルト会長自身が人材開発を最も重要な仕事の1つと位置付け、多くの予算を割いている。人材開発部門は多くの人員を抱え、人材戦略の立案や研修プログラムの企画、運営に携わっている。

 一方米グーグルは「もともとインターネットへの興味や専門性を持つ人材を選び抜いて入社させるのだから、研修は不要。放っておいても勝手に勉強して成長する」というスタンス。ASTDに参加した人事担当者たちは、「こんな会社が増えると、おれたち人材育成担当の仕事がなくなっちゃうよ」という不安を口にしていた、と池田氏は話してくれた。

 私自身は残念ながらグーグルに取材した経験はないのだが、書籍や雑誌記事などでちょっと調べてみた。グーグルに本当に研修がないかどうかは確認できなかったが、「優秀な社員を採ってあとは放任」というのは少し違うようだ。

 「仕事時間の2割を日常業務以外に割くことができ、自分のやりたいテーマに取り組める」という制度が同社にあることはよく知られている。それ以外にも、週に1度上司と部下が面談して、相談や助言をする「ワン・オン・ワン・ミーティング」が浸透していたり、各社員の担当業務や専門分野を網羅したデータベースをイントラネット上で照会し、自由に質問や依頼ができる環境が整っていたりするらしい。こうした仕組みが、日常業務のなかで社員が自律的に育っていくインフラとして機能しているのだろう。

 ではOJT重視のグーグル、Off-JT重視のGEとくくれるのかといえば、それも違うような気がする。GEも挑戦する風土や社員の自律的な成長を重視する企業だ。ただし、グローバルな大企業で、数多くの事業部門を抱えたマルチカルチャーなGEでは、画一的な仕組みをすべての事業会社や組織に適用するのは難しい。だからクロトンビルで、リーダーシップや組織運営手法を学ばせ、それぞれの組織に合った形で「育つ仕組み」を考えさせるように仕向けていくわけだ。人事担当者の関与度はともかく、両社の目標とするところは、根底では極めて近いのではないだろうか。

高い目標とこまめなフォロー

 「人が育つ仕組み」は自分自身、ずっと興味を持っているテーマで、国内の企業にそうしたテーマで取材をする機会も多い。危機的な経営状況からV字回復したり、大幅な事業拡大を実現したりした企業に取材すると、「ストレッチした目標を掲げたら、社員が死に物狂いでがんばってくれて達成し、社員も成長したんですなあ」という経営トップの述懐を聞くことも多い。だがよく話を聞くと、やはりそこにはちゃんと「仕組み」が存在していることに気づく。

 その一例が、ポンプ製造大手の酉島製作所だ。もともと水道などの公共事業向けにポンプを供給していた同社は、国内公共事業の縮小に伴い、中東など世界各国の淡水化プラントや国内の民間設備投資などの需要を取り込み、メンテナンス事業にも乗り出した。2010年3月期の受注高は前期比2ケタ成長を遂げた。海外への本格進出を始めた2002年ごろには、海外顧客の厳しい要求にこたえるため、設計業務の生産性を2倍に高めるなど、高い業務改善目標を掲げた。

 この目標の達成に向け、「TW(酉島ウエイ)プロジェクト」と呼ぶ生産性向上活動に取り組んだ。最終目標達成までの道のりを月次や週次の目標に落とし込み、週次で生産性を計測した。現場のマネジャーと技術者は毎日面談して、「何が障害になっているか」「それをどう乗り越えるか」をともに考え、試行錯誤を繰り返した。グーグルの「ワン・オン・ワン」と同様の取り組みだ。この仕組みのなかで、現場のマネジャーや社員が問題解決のスキルとモチベーションを上げ、現在、技術開発や顧客開拓のキーマンとして活躍している。

 V字回復といえば、日産自動車の「ゴーン改革」が思い浮かぶ。部門横断プロジェクトの「CFT」や、職場チームの「V-up」で組織に内在する様々な課題を解決して業績向上につなげたことはよく知られているが、ここにもフォローの仕組みは存在している。コーチングやファシリテーションなどのコミュニケーション手法を組織に定着させて、上司が部下のモチベーションを向上させたり、個人の知見や思いを会議の場に引き出したりしたことが、プロジェクトの成功に寄与しただけではなく、苦しい環境下で若手社員が育つ助けとなった。

 日経情報ストラテジーでは7月27日に「現場の自律性を駆動するリーダーの条件」と題したセミナーを開催する。グローバル経営への舵取りが喫緊の課題となるなか、それを牽引する人「財」の育成をテーマとする。酉島製作所の原田耕太郎代表取締役社長や、日産自動車で副社長を務めた楠美憲章氏にご講演をいただき、両社が組織に埋め込んだ人材育成の仕組みを語っていただく予定だ(詳細はこちら)。人が「育つ」組織つくりにご興味をお持ちの方に是非ご参加いただきたい。

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