The Linux Foundation SI Forumは、国内の大手SI(システムインテグレータ)のオープンソースソフトウエア(OSS)担当者が集まるワーキンググループである。彼らがまとめた「オープンソースソフトウエア活用動向調査」と、この調査についてのセミナーで彼らが語った話が興味深かった。

 The Linux FoundationはLinus Torvalds氏がフェローとして所属する、Linux普及推進を目的とする非営利組織である。そのワークグループとして、大手SIが集まりSI Forumとして活動している。オープンソースソフトウェア活用動向調査 2009年度は、SI Forum メンバー企業でのOSS利用実績を集計したものだ。データベース形式になっており検索もできる。

 調査は、各企業でどんなオープンソースソフトウエアが利用されているか、あるいは検討段階にあるかを調査したものだ。398種のオープンソースソフトウエアを対象に利用状況を調べ、「使用実績多数」、「使用実績あり」、「検証実績多数」、「検証実績あり」に分類している。2007年度に第1回調査を行い、2009年度が第3回である。

 ただし、どのように使われているかや、各企業でのOSSの利用され方の変化といった定性的な情報は集計できない。調査の過程で担当者が聞いた、あるいは感じたことを話そうというのが、2010年6月17日に行われた「Linux/OSS システム構築最新動向セミナー」の中のパネルディスカッションだ。

 パネリストは日立システムアンドサービスの吉田行男氏、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(SSL)の筒井敏人氏、レッドハットの中井雅也氏、NECの淡路修一氏。司会は筆者が務めた。

Windowsで、基幹システムで使われるOSS

 まず「特筆すべき傾向や事例」について尋ねた。日立システムアンドサービスの吉田氏が真っ先に挙げたのは「実際にOSSが利用されているのは、意外にWindows上が多い」ということだ。OSSというとLinuxの上で、という印象があるが、WebサーバーのApacheや、MySQL、PostgreSQLといったデータベース管理ツールなどはWindowsサーバー上で多く使われているという。

 富士通SSLの筒井氏は、OSSは無償版がまず利用され、有償版に移行するケースが多いという。最初は小さなシステムとして稼働したが、次第にユーザーが増え、業務の中での重要度が拡大していくケースだ。メールサーバーのsendmailは大規模システム向けに有償版を提供しており、最初はコストを抑えて導入し、システムが拡大したらコストをかけて性能や可用性を強化できる。

 レッドハットの中井氏も、OSSは最もミッションクリティカルなシステムで稼働していると話す。2010年1月に稼働した東京証券取引所の株式取引システム「arrowhead」(関連記事)はLinuxを使用している。東証のほかに、ニューヨーク証券取引所、シカゴマーカンタイル取引所(関連記事)もLinuxをプラットフォームとしている。

 NECの淡路氏は、テストなど、システム本体以外でもOSSが重要な役目を果たしていると指摘する。