日経NETWORKは2010年4月12日から5月14日までの約1カ月間で、企業ネットの担当者を対象に「ネットワークの実態調査 2010」を実施した。Webサイトから回答できるアンケートで、日経NETWORKのホームページやITproのメールマガジンなどで告知を行い、2115人から回答を得た。ご回答いただいた方々には、お礼を申しあげる。

 この調査は、「ネットワーク管理者の正しい相場観」で紹介したように、企業ネットの“相場”を知るために実施した。日経NETWORK 7月号では、調査結果に基づく特集記事を掲載する。記事では、DNSサービスやIPアドレスの管理方法の採用率、ウイルス対策の導入状況、拠点間を結ぶWANサービスの選択と障害時に備える冗長化方法の利用率を取り上げている。

 ここでは、誌面の都合で取り上げられなかった、企業ネットのトラブルとネットワーク機器の更新頻度、保守契約の有無の関連性について紹介したい。意外にも、ネットワーク機器を定期的に更新し、保守契約を結んでいる真面目な担当者のほうが、若干だがトラブルに遭遇しやすい傾向があるようだ。

「故障したら入れ替える」が4割超

 アンケートでは、回答者がかかわる企業ネットでここ2年間に発生したトラブルの概要を尋ねた。有効回答数は1746で、トラブルに遭遇した回答者は1152人(66.0%)と回答全体の3分の2を占めた。

 トラブルに遭遇した人のうち、ネットワーク機器の故障が原因だったのは403人(トラブルに遭遇した人の35.0%)。この403人が回答したネットワーク機器の更新頻度と、回答者全体の更新頻度を比較してみた(図1)。

図1●ネットワークの故障によるトラブルに遭遇した人と回答者全体の、ネットワーク機器の更新頻度の比較
図1●ネットワークの故障によるトラブルに遭遇した人と回答者全体の、ネットワーク機器の更新頻度の比較
Nは無回答を除く有効回答数。各比率は小数点第2位を四捨五入したパーセント表示。すべてを合計してもちょうど100にならないのはそのため

 回答者全体のグラフ(図1上)を見ると、ネットワーク機器を定期的に更新する人(「故障したら入れ替える」と「その他」以外)は半数に届かず47.9%。「故障したら入れ替える」という“場当たり的”ともいえる対応をする人は46.1%だった。

 これに対して、ハードウエアの故障に遭った人の場合、予想に反して回答者全体より更新頻度をきちんと決めている比率がやや高く50.3%に達した(図1下)。その一方で「故障したら入れ替える」とした比率は42.3%に低下した。常識とは逆の結果である。

 同じような傾向が、「ネットワーク機器の保守契約を結んでいますか」という質問の回答でも見てとれる(図2)。

図2●ネットワークの故障によるトラブルに遭遇した人と回答者全体の、ネットワーク機器の保守契約の有無の比較
図2●ネットワークの故障によるトラブルに遭遇した人と回答者全体の、ネットワーク機器の保守契約の有無の比較
Nは無回答を除く有効回答数。各比率は小数点第2位を四捨五入したパーセント表示

 こちらはもう少しはっきりとした差が出た。回答者全体では保守契約率が62.1%なのに対し、トラブルに遭遇した人では8ポイント以上高い70.4%だった。

転ばぬ先の杖がトラブルの発生・拡大を引き起こす

 アンケートでは、トラブルの状況やトラブル解決にかかったコストを、自由記述欄に答えてもらった。その答えのなかで、トラブル解決のコストが300万円以上かかった人(平均は約30万円)のトラブルの概要を読んでいくと、ここでも苦労している真面目な担当者が多かった。

■トラブルの概要1
「コアスイッチの故障を契機にトラブルが発生しました。ネットワークを完全二重化していたのですが、大規模なSTP(スパニング・ツリー・プロトコル、関連記事)の処理でサーバーとネットワーク機器の切り替えに失敗して、結果的に大きな障害になってしまいました。片方の系統を強制的にダウンさせて、その場をしのぎましたが、完全復旧の再設定のために約半年かかりました」

■トラブルの概要2
「旧型のレイヤー3スイッチを二重化していました。ところが設定ミスによって、ブロードキャストストーム(関連記事)が発生してしまい、トラブルになりました」

 この二つの回答は、ハードウエアの故障に備えてネットワークを二重化したことに端を発するトラブル例である。真面目に耐障害性の向上に取り組んだのに、意に反してトラブルを引き起こし、解決のために多額の費用を要したのは皮肉なことである。

 今回のアンケートでは、真面目な担当者の皮肉な結果が目立ってしまった。なぜこのような傾向が表れたのだろうか。いろいろ考えてみたが、納得できる理由は思い浮かばなかった。もし次回のネットワークの実態調査に携わる機会があれば、その辺りを探ってみたい。