ソリューションの提案書を読むのって面白い――。このところ、よく思うことだ。真面目に製品やソリューションを選んでいるユーザー、それに応えようとしているベンダーの方々にとっては、不謹慎な言い草に聞こえるかもしれないが、ご容赦いただきたい。

 最近、誌面で、複数のベンダーにソリューション提案を募り、それを並べて一つの記事を構成するコラム「ソリューションクローズアップ」を始めた。ソリューション提案といっても、筆者が所属する「日経コミュニケーション」は通信・ネットワークにフォーカスした雑誌だから、ソリューションのテーマもネットワークがらみである。例えば1回目(5月号)はWAN高速化装置、2回目(6月号)はグローバルネットワークをテーマに選んだ。ほかにも、Webセキュリティ、情報漏えい対策、プライベートクラウド、スマートフォンを含めたモバイルデータ通信など、いろいろなテーマがあり得ると思っている。

 このコラム、実は筆者自身が思いを込めて書く部分は全くない。前半はコンサルタントなどによる市場動向の寄稿、後半はベンダー各社の提案内容の説明である。各社の提案については、特に優劣は付けずに掲載する。だから、編集作業そのものに、スリルやわくわくドキドキする感じがあるわけではない(締め切りに間に合うかどうかのドキドキ感はある)。

 それでも、受け取った提案を眺めると、とても興味深い。理由はいくつかある。まず内容そのものにバリエーションがあること。次にベンダーの立ち位置の違いが見える点。そして、全く別の提案から共通点を見出せることだ。そこからさらに、別のアイデアを生み出せそうに思うこともある。

意外性が面白いところ

 提案の内容をみると、中には「へぇ~、そういう考えもあったか」というものがある。実際、第1回のWAN高速化装置のケースでは、一つの提案が「各拠点にキャッシュサーバーを置く」というものだった。決して珍しい仕組みではないし、二つあった提案のうち、こちらの方が際立って優れているというつもりもない。ただ「WAN高速化装置」として、筆者がプロトコルの最適化などを想像しがちだったため、この提案に「意外」という印象を持った。

 もちろん、想像の範囲内という提案もある。むしろ、そのほうが全体に占める割合は高くなるだろうと思う。それでも、ベンダーごとの力の入れ所の違いが見えることもあるし、思い切って一部の要件に対する解だけに絞り込んだ意外性を感じる提案もある。

 そして、こうした様々なソリューション提案を並べていくと、テーマが共通していない提案同士の共通点が見えたり、別の提案への応用を考えてみたくなったりする。

 例えばグローバルネットワークの回では、第1回のテーマだったWAN高速化装置が何の指定もなしに出てくる。さらにファイアウォールやウイルス対策ゲートウエイを統合したUTMも提案に含まれている。「それなら、UTMとWAN高速化装置は1台で済まないのか」「そうえいば最近、リバーベッドテクノロジーとマカフィーが提携を発表していたっけ」…。「このUTMにはIPS(侵入防御システム)が載っているな」「入っているIPSを仮想パッチとして使えば、内部のサーバーやクライアントの管理が簡単になるな」「いやいや、それじゃ高すぎる。いっそ、仮想デスクトップみたいなものじゃだめか」「それって、そもそもWAN高速化装置できちんと効果が出るんだっけ?」…。こんな調子だ。

 提案が並べば、読者の方々も、こんなふうに想像をはたらかせるのではないか(提案が並ばなくてもそうかもしれないが)。とはいえ、記事として掲載しているのは、応じてくれたベンダーからのもので、それも2ページ分しかない。それも1回にせいぜい2、3社の提案だけだ。そこで日経コミュニケーションでは、別途、セミナーを企画した。第1弾は「ネットワーク高速化」をテーマとした。WANに限らず、サーバー周辺まで含めたネットワークの高速化を視野に入れ、今考えられるソリューションを紹介するものだ(セミナーの詳細はこちら)。

 実は、提案された内容と同時に、ベンダーに渡す架空事例のRFP(提案依頼書)も案外面白い。性能要件が中心の場合、機能要件が中心の場合、さらには要件を明確に定義しづらい場合など、提案を求めたいテーマ(構築したいネットワークやシステム)や状況によってRFPの内容が違ってくるからだ。

 例えば将来の状況変化などにより、現時点で要件を明確に記述できない場合がある。実際、グローバルネットワークの回ではそんな状況を想定。疑似RFPでは、要件そのもののほかに、「要件を満たすためにどのようなアプローチをとるか」といった質問事項を記載した。同コラム、およびセミナーには、こんなRFPの作り方を知るという使い方もある。ぜひ、ご来場いただければと思う。