「医療費の適正化」。こんな経営戦略を掲げて、業績を伸ばしているITサービス会社がある。広島県に本社を置き、医療関連情報サービスを展開するデータホライゾンだ。売上高は、2009年度(3月期)に前年度比28%増の約19億円。今期も35%増の25億8500万円を見込む()。多くのIT関連企業が不況に喘ぐなか、データホライゾンはなぜ絶好調なのだろうか。

表1●データホライゾンの業績推移(単位:百万円)
  2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度
見込み
売上高 826 1,212 1,495 1,920 2,585
営業利益 64 252 316 301 300
当期利益 96 241 177 165 175

 2008年9月に東証マザーズに上場した同社は1982年の設立で、受託ソフト開発で事業をスタートした。しかし、「受託ソフト開発とは、こんなに儲からない仕事なのか。10カ月残業を続けても、2カ月暇になると収支がとんとんになってしまう。コンスタントに仕事があるわけではないので、社員が定年まで勤められるのか」と内海良夫社長は当時を振り返る。設立から2年後には、早くも高収益モデルへの転換を決意した。

 新たに目指したのは、1984年頃に普及し始めたパソコン用の業務パッケージソフトだった。「伸びている産業向けで、たくさん売れそうなもの」(内海社長)を考えた結果、ガソリンスタンド向けソフトの開発に取り組んだ。地元の中国地方や近畿、東京などのガスリンスタンドに売れた。

 だが、やがて売れなくなった。市場環境が悪くなると、値下げを要求したり、購入を控えたりする顧客が現れた。

 「一つのパッケージソフトが売れると、一生食べていけると錯覚してしまう。しかし、売れるのは長くても5年から10年だろう。5年先に伸びる産業を見つけ出し、次の上りエスカレータに乗り移ることが大切」(内海社長)。この考えに基づき、同社は養豚の生産管理システム、調剤薬局システム、医療関連情報サービスへと主力商品をシフトさせてきた。研究開発費に年間2億から3億円をあてている。

データ分析で病気予防を働きかける

 データホライゾンが提供する医療関連情報サービスには、2003年4月に始めた保健事業支援システム、2006年7月に開始したジェネリック医薬品通知サービスなどがある。これらのサービスを手がけようとした背景には、医療費の急増があった。

 2008年度に34兆円超になった医療費が年率3%で増え続ければ、2025年に60兆円近くに達するとの見方もある。少子高齢化が進み、生産年齢人口(15歳から64歳)が減っていけば、働く世代の保険料を上げざるをえなくなる。もし30兆円増えたら、単純にいえば、その5割を企業、残り5割を個人が負担することになる。保険料を支払えない国民が増え、医療費負担増から経営を維持できなくなる企業が出てくることが予想される。

 データホライゾンはそうした事態を避けるためのビジネスとして、国民健康保険を運営する地方自治体や健康保険組合に保健事業支援システム、ジェネリック医薬品通知サービスの提供を開始した。被保険者の医療情報を一元管理できる立場にいる国保・健保組合がその情報を活用すれば、増加する一方の医療費を抑制できるとの考えからだ。