2010年4~5月に行われた内閣府行政刷新会議ワーキンググループ(事業仕分け)第2弾を傍聴する機会があった。2009年11月に行われた第1弾(関連記事)に続くものだ。

 筆者は「経営革新にIT(情報技術)を活かす」ためのノウハウを提示する『日経情報ストラテジー』という月刊ビジネス誌を長年担当してきた。企業の情報システムやIT戦略が専門分野で、行政機関や公益法人の情報システムは専門外ではあるが、こうした課題が事業仕分けの場でどう扱われるのかに関心があった。

建設業界の電子商取引システムが仕分け対象

 筆者が傍聴したのは5月21日午前中に行われた国土交通省所管の財団法人である日本建設情報総合センター(JACIC)を対象とした事業仕分けである。公共工事に関連する「電子入札システムの運営管理」と「工事・業務実績提供システム(コリンズ・テクリス)からの情報提供」という2事業が仕分け対象だった。

 JACICはこれらの情報システムの開発や運用を担当している。公共工事の発注者である国土交通省や地方自治体、受注者である全国の建設業者がユーザーに当たる。建設業界は1990年代から発注者も受注者も巻き込んだ形でデータを共有しようという「CALS」の取り組みを進めてきた。JACICはこの中核を担ってきた。

 この日の午後には「宝くじ事業“廃止”」の評価結果が出て大きな話題になった。JACICの事業は宝くじに比べれば一般の国民にはなじみのない事業で、一般の新聞・テレビなどではほとんど報道されなかった。

 仕分け人(評価者)は、おなじみの蓮舫参院議員も参院本会議のため欠席していて、衆院議員と有識者の17人が出席していた。筆者は、事業仕分けでは「廃止ありき」の議論が繰り広げられるものだとイメージしていた。しかし、この法人や情報システム自体を廃止すべきだという意見は皆無だった。仕分け人17人全員が事業継続の必要性を認めていたようだ。

 ただ、仕分け人と国土交通省やJACICの担当者との間の議論は明らかにかみ合っていなかった。