内閣府 行政刷新会議が2010年4月23日から5月25日にかけて行った「事業仕分け」。ネットで中継されるなど公開の場でオープンに実施された。実はその公式サイトはOSSを利用している。OSSを公開したオープンビジネスソフトウェア協会がSaaSとして受託、約1カ月半の費用は約95万円。これ以上仕分けできない高い費用対効果である。

経産省アイディアボックスの成果をOSS化

行政刷新会議のWebサイト
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オープンビジネスソフトウェア協会が公開した「Website Builder for SugarCRM」の管理画面
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 内閣府 行政刷新会議の公式サイト「shiwake.go.jp」が利用しているのは「Website Builder for SugarCRM」。オープンソースのCRM(顧客管理システム)であるSugarCRMのフレームワークを利用したコンテンツ管理システムだ。オープンビジネスソフトウェア協会は「SugarCRM日本語ドキュメントプロジェクト」を母体としたコミュニティであり社団法人だ。同プロジェクトは千葉市と早稲田大学の官学協力により実施された、SugarCRMの日本語ドキュメントを作成するプロジェクトである。また「SugarCRM勉強会」と題する勉強会も開催しており、現在はオープンビジネスソフトウェア協会がこれを引き継いでいる。

 行政刷新会議の公式サイトで利用した「Website Builder for SugarCRM」は、経済産業省が2010年2月から3月にかけ開設した「経済産業省アイディアボックス」第二弾のために開発されたものだ。IT政策に関する意見をインターネットで募集、議論する「ネット審議会」(経産省)サイトである。アイディアボックス第一弾を見て「オープンソース・ソフトウエアを利用し、ベンダーを大手に限定しなければもっと安く作れる。また開発したアプリケーションが、ベンダーが変わると作り直しになるのはおかしい。税金で作ったものが、特定の1社のシステムに縛られることになってしまう」と考えたSugarCRM日本語ドキュメントプロジェクトのメンバーは、社団法人 オープンビジネスソフトウェア協会を設立しアイディアボックスの開発と運用を請け負った。この時も1カ月間のSaaSとしての契約で、費用は90万円。アイディアボックス第一弾のシステム費用が約700万円だったのに比べコストを大幅に削減できた(関連記事「国民との対話が生んだ、経産省ネット審議会の劇的コスト削減」)。

 SugarCRMを利用した理由は「SugarCRMはアプリケーションであるだけでなく、開発環境としても優れている」(オープンビジネスソフトウェア協会 会長 河村奨氏)ためだ。「Webブラウザ上でデータ項目名を設定するだけで、データ一覧、詳細、更新画面が生成され、それを“足場”にPHPでアプリケーションを作ることができる。ユーザー管理機能や利用状況分析機能も最初からビルトインされている」(河村氏)。

 そしてオープンビジネスソフトウェア協会はアイディアボックスのために開発したソースコードを、2010年5月8日に「Website Builder for SugarCRM」として公開した。「行政主体の公共的な意味を持つプロジェクトは、その成果だけでなく、プロジェクトを実施するために作られたソフトウエアを含めて、原則として公共財となるべき。これにより『ソフトウエア開発会社による囲い込み問題』を解決し、誰もがソフトウェアの利用や改変をできるようになる」(オープンビジネスソフトウエア協会)という理念からだ。