保守できなくなり、塩漬けにしたままのオープンシステム---。いま“オープンレガシー”が情報システム部門を苦しめている。

 「仕事の6割を保守切れソフトの更改だけに費やしている」。ある大手損害保険会社のシステム子会社でシステム基盤を開発保守するリーダーはこう打ち明ける。「2009年からIT投資の削減が要求が厳しくなり、開発リソースは限られている。一刻も早く整理して、新規開発にリソースを回さなければならない。ところが現状では、保守切れソフトに足を引っ張られている」と同氏は続ける。

 この損保が抱えるオープンシステムは3000個。使われているOSとミドルウエアと運用手順を掛け合わせると140種類にも上る。同社はこれを今後10年で40種類まで減らしていくという。少なくともあと10年はオープンレガシーの呪縛から逃れられないという見方もできる。

オープンシステムのデメリットが重くのしかかる

 1990年代から2000年代の初め、オープンシステムは「早く安く作れる」「新しい技術が使える」「1社のベンダーに縛られない」といった輝きを放ち、“自由”の象徴だった。このメリットを追って、多くの企業がメインフレームからオープンシステムへと開発の軸足を移した。

 だが今、その輝きは色あせ、輝きの裏に隠れていたデメリットが情報システム部門に重くのしかかっている。「早く安く作れる」というメリットは「作りすぎて保守できない」というデメリットに裏返された。「新しい技術が使える」というメリットの裏には「選んだ製品が廃れる」というデメリットが、「1社のベンダーに縛られない」の裏には「組み合わせの制約で更改しにくい」というデメリットが存在した。

 メリットを追い続けてとにかく作り続けた結果、振り返ればオープンシステムはレガシーとなって企業を苦しめている。しかし、開発コストとスピードを考えるとメインフレーム時代には戻るのは現実的ではない。

 オープンレガシーの状況から抜け出す方策はあるのか。日経コンピュータはオープンレガシーの現状とそこから抜け出す鍵を探り、全容を2010年5月12日号の特集「オープンレガシーを救え」にまとめた。12社への取材と1374人へのアンケート調査を通して見えた「救いの鍵」は次の七つである。

オープンレガシーを救う七つの鍵

1. 運用を立て直す

 オープンレガシー最大の課題は、保守運用がままならなくなったことだ。立て直すには業界標準を足がかりにする。

 ある合成ゴム製造大手は、オープンシステムの運用を始めて、たった半年でメインフレーム時代に培った運用のノウハウを失った。同社は今、10年がかりでそれを立て直している最中だ。

 まず3年をかけて「ISMS(情報セキュリティ・マネジメント・システム)」を取得して、手順に沿って運用する文化を取り戻した。次に、運用管理のベストプラクティス集である「ITIL(ITインフラストラクチャー・ライブラリー)」でその手順の一つひとつを磨いて、運用の品質を高めている。

2. 保守切れソフトを更改する

 オープンレガシーの運用を難しくしているのが、保守サポートが切れた製品を使い続けていることだ。これをどう更改していくかは、保守切れ製品に脆弱性やバグが見つかった場合に業務に与える影響の大きさと、更改に必要な費用とのトレードオフを考えていく必要がある。

 悪影響を危ぐするなら、とにかくスピードを優先させる。コストを抑えるなら塩漬けできる部分はセキュリティに考慮したうえで塩漬けを続け、システムの全面刷新といったチャンスをうかがい続けるしかない。