有力ソフトウエア会社(売上高1000億円以上)の2009年度決算からは、先行きが不安な姿しか見えてこない(表)。多くのソフト会社が2期連続の減収減益で、売り上げは2007年度に比べて20%も落ち込んでいる。予想を上回るスピードで、IT需要が縮小しているのだ。
表中の12社を単純合計すると、2009年度の売上高は5.3%減、営業利益は22.7%減に終わった。営業利益率は7.4%から6.0%に低下。成長に向けた施策を打ち出せるような経営状況ではなかろう。どこも人件費や外注費、不採算事業からの撤退による固定費削減が最優先課題となっている。顧客企業に技術者を送り込み、1人月当たり数十万円を得るビジネスで業績回復を図ることは困難である。このままでは、多くのソフト会社に「明日はない」と言っても過言ではない。
社名 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | ||||
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2008 年度 |
2009 年度 |
伸び率 | 2008 年度 |
2009 年度 |
評価 | |
NTTデータ | 11,390 | 11,429 | 0.3% | 985 | 816 | ▲17.1% |
大塚商会 | 4,671 | 4,271 | ▲8.0% | 270 | 160 | ▲40.6% |
野村総合研究所 | 3,412 | 3,386 | ▲0.8% | 497 | 400 | ▲19.4% |
ITホールディングス | 3,383 | 3,148 | ▲7.2% | 237 | 159 | ▲32.8% |
伊藤忠テクノソリューションズ | 3,072 | 2,903 | ▲5.5% | 216 | 215 | ▲0.5% |
日本ユニシス | 3,101 | 2,720 | ▲12.6% | 158 | 71 | ▲55.3% |
NECネッツエスアイ | 2,490 | 2,177 | ▲12.6% | 109 | 98 | ▲10.0% |
NECフィールディングス | 2,110 | 1,908 | ▲9.6% | 104 | 101 | ▲2.8% |
新日鉄ソリューションズ | 1,615 | 1,521 | ▲5.8% | 115 | 107 | ▲6.2% |
富士ソフト | 1,650 | 1,468 | ▲14.2% | 73 | 32 | ▲55.0% |
住商情報システム | 1,342 | 1,273 | ▲5.2% | 90 | 64 | ▲28.8% |
ネットワンシステムズ | 1,311 | 1,243 | ▲5.1% | 88 | 50 | ▲43.7% |
合計 | 39,547 | 37,447 | ▲5.3% | 2,942 | 2,273 | ▲22.7% |
2009年度の業績を詳細に見てみよう。減収幅が10%以上だったのは、富士ソフト(▲14.2%)、日本ユニシス(▲12.6%)、NECネッツエスアイ(▲12.6%)だ。ITホールディングス(ITHD)は7.2%減だが、買収したソランの売り上げ(第4四半期分)を除くと10%超のマイナスになる。表にはないが、構造改革を進めているCSKホールディングスは17.7%減と大きく落ち込んだ。
縮小する受託開発市場の変化に追随できていない
数年前、ソフト各社は売り上げ拡大路線を推し進めていた。500億円企業は1000億円、1000億円企業は3000億円、3000億円企業は5000億円を目指す目標を掲げたことがあった。
しかし、M&Aをしても業績に貢献する成果が表れていない。つまり、市場ニーズの変化に対応できておらず、既存ビジネスの落ち込みをM&Aでカバーできてない、ということだ。
もちろん、各社は決算説明会などで成長に向けた施策を発表しているが、「これだ」という決め手に欠けている。「グローバル化、クラウド化、エネルギー/環境がカギ」との認識は各社に共通しているが、将来像を描ききれていないのだ。どのような形態で事業に参画し、どの程度の収益を見込めるのかは不透明である。
グローバル化が最たる例である。実は、グローバル化で実績のあるソフト会社はほとんどない。海外拠点がないのだから、現地サポートができるはずはないし、提携先があってもオフショア開発にとどまっている。このような体制で、ユーザー企業がサポートを頼むだろうか。
クラウドサービスもそうで、本気で取り組むとは思えない。クラウドの進展は請負の受託ソフト開発を激減させる可能性があり、そこを収益源とするソフト会社にとっては両刃の剣である。ある中堅ソフト会社の経営者は「従来ビジネスでの成功体験があるので、ビジネスモデルは変えられない」と語る。減収減益であっても赤字ではないので、役員にも社員にも危機意識はないというのだ。
だが、クラウドサービスなどの影響により、国内の受託ソフト開発市場は間違いなく縮小していく。
成長機会を得るためにグローバルに打って出るのも必要だろうが、まずは足元を固めることだ。例えば「受託ソフト開発からITサービスへ、ビジネスモデルの転換を5年以内に達成する」と設定し、1年目、2年目、3年目に取り組むことを決め、着実に方向転換を進める。どんな技術に力を入れ、どの事業に注力し、どんな方向に進むのかを決断するのは、経営者の役割である。今、ソフト会社の経営者は決断力と実行力が問われている。