スマートフォンが売れている。MM総研の調べによれば、2009年度通期の国内スマートフォン出荷台数は234万台で前年度の110万台の2倍以上となったという。うち、米Appleの「iPhone」は169万台で72.2%を占める。2010年4月1日に発売されたソニー・モバイル・コミュニケーションズの「Xperia」も売れに売れている。出荷台数こそ明らかになっていないものの、あっという間に店頭在庫がなくなるほどの売れ行きを見せた。

 テレビの情報番組や雑誌でもスマートフォンが取り上げられる機会が急増し、電車の中などでもごく普通にスマートフォンを操作する人を見かけるようになった。一種のブームのような様相を呈し始めたとも言える。

 筆者も、「Android Application Award 2010 Spring」の事務局にかかわるようになり、個人的にもスマートフォンを購入するなど、スマートフォンを毎日操作する生活に突入した。正直に言えば、スマートフォン購入直後はこれまで持っていた携帯電話機(いわゆるガラパゴス携帯=ガラケー)に比べて、スマートフォンはずいぶんと使いにくいと感じた。タッチパネル方式の入力に慣れていなかったという点は大きかったが、それ以上に面食らったのがメール系ソフトウエアの操作感や機能だった。

 例えば、iPhoneに標準搭載されている「SMS/MMS」。iPhoneで「○○○@softbank.ne.jp」のやり取りはこのソフトを使うのだが、バックスペースキーと送信キーが上下に並んでおり、頻繁に書きかけのメールを送信してしまった。あまりにも誤操作がひどいので、常用するメールアドレスを「○○○@i.softbank.jp」に変更して同じく標準搭載の「メール」というソフトを使うようにした。しかしこのソフトでは、任意のフォルダを作成し、送信元アドレスに基づいて自動的にフォルダに振り分けることができなかった。ガラケーでは当たり前のようにできたフォルダ振り分け機能がないことに、ずいぶんと驚かされつつも、仕事のメールもプライベートのメールもすべて受信フォルダにためこんで使っていた。

 Xperiaに標準搭載されている「Eメール」も同様だ。フォルダ作成やフォルダへの自動振り分け機能はない。しかも、ゴミ箱フォルダのメールの一括削除すらできないのだ。まさかそんなことはないだろうと、あちこちメニューをたどってみたり、検索サイトで情報を探ってみたりしたが解決案は見付からない。仕方なくNTTドコモのサポートセンターに電話して質問すると、返ってきた回答は「ゴミ箱フォルダのメールは1件ずつ削除してください」だった。

 では、これだけでスマートフォンは使いにくいと言えるのか。必ずしもそうではない。スマートフォンがガラケーと大きく違うのは、様々なアプリを自由にインストールできることだ。アプリの種類はいろいろとあり、メールクライアントなども選べる。プリインストールソフトが気に入らなければ、気に入るソフトを探せばいいのだ。

 こうした考え方は、どちらかといえばパソコンに近い。パソコンをプリインストールソフトだけで使う人はほとんどいないだろう。Windowsには簡易エディタの「メモ帳」があるが、メモ帳の機能が低いからといって「パソコンは使いにくい」と結論付けることにはならないはずだ。

 筆者は最初、そのことをあまり意識することなく、つい、プリインストールソフトの出来不出来だけで「ガラケーの方が良かった」などと考えてしまった。しかし使いにくいのなら、使いやすいように工夫すればよかっただけのことである。

 例えば、iPhoneの「メール」にフォルダの自動振り分け機能がないことについては、他のアプリの併用で大幅に改善した。それは、App Storeで350円で売られている「Mail Folders(メール仕分)」というアプリ。これを併用することで、フォルダの作成やリネーム、削除、送信元メールアドレスによる振り分け処理が可能になる。メール受信時にリアルタイムに振り分けてくれるわけではないが、1日に2~3回起動して振り分け処理を実行すれば、きちんとフォルダに振り分けられる。非常に便利だ。

 Xperiaのメールソフトは、「K-9 Mail(日本語版)」をインストールした。K-9 MailはAndroid向けメールクライアントとしては著名なソフトで、Android Marketには英語版しかないが、有志によって日本語化がなされている(無償、ただしAndroid Market以外からアプリをダウンロードしてインストールするにはセキュリティ設定の変更が必要)。K-9 Mailはマルチアカウントに対応しており、Gmailのラベル付けによるメールの自動振り分けに応じてフォルダを分けることができる(Xperia標準搭載の「Gmail」はマルチアカウント非対応)。また、メールを一括選択して削除することもできるので、ゴミ箱を空にするのも容易だ。

 このようにして、スマートフォンは自分が使いやすいようにカスタマイズしていくものなのである。

 とはいえ、こうした作業には当然のことながらある程度のリテラシーが必要になる。少なくとも、パソコンで自由自在にアプリをインストールしたり、アンインストールしたりできるぐらいの経験がないと、いきなりそれをスマートフォン上でやれというのは酷だろう。選べるアプリがまだ限られることや、これさえ選べば大丈夫といった“定番アプリ”がよく分からないということも、敷居の高さを感じさせる原因だ。特に、日本語版のAndroidアプリはまだまだ少ない。

 こうした点を考え合わせると、今のところスマートフォンは万人向けの商品とは言い難い。しかし、かつてはパソコンだって同じようなものだったのだ。スマートフォンも、いずれはパソコン程度にまでは一般化するだろう。しかもパソコンがたどった道筋よりも、かなり速いスピードでそうなるはずだ。

 スマートフォン用のスイート製品なども登場するかもしれない。メールクライアントやTwitterクライアントなどをセットにした「コミュニケーションスイート」や、音楽・映像などを閲覧・編集できるアプリをセットにした「オーディオビジュアルスイート」といったようなものだ。アプリを一つひとつ探してインストールするよりも、楽にアプリが手に入る。

 ユーザーとしてはiPhone用だろうがAndroid用だろうが、いろいろなアプリがいっぱい出てきてほしい。そういう意味では、ITproの主催で実施している「Android Application Award 2010 Spring」なんかも、少しはアプリ制作促進の一助になっているのではないかと思う。Android Application Award 2010 Springでは、5月13日に作品の応募を締め切り、数多くの応募をいただいた。改めて御礼を申し上げる。結果の発表は6月の予定だ。楽しみにしていただければ幸いである。