総務省は2010年4月2日、「携帯電話端末のSIMロックの在り方に関する公開ヒアリング」を開催し、携帯電話のSIMロック解除の方向性を示した。これがNTTドコモとソフトバンクの株価にも影響を与えるほどの話題となっている。

 SIM(Subscriber Identity Module)またはSIMカードとは、携帯電話の電話番号などが書き込まれたICチップのことを指す。各通信事業者が提供する携帯電話端末は、その通信事業者のICチップしか利用できないようになっている。これがSIMロックである。各通信事業者が端末価格の割引などができるのは、電話番号と携帯電話端末を結び付けているSIMロックがあるからともいえる。

 5月10日には、米Appleの「iPad」の予約販売が日本でも始まった。前評判では、iPadはSIMロックが解除された形、すなわちSIMフリーで提供され、NTTドコモの利用も可能かと騒がれていた。しかし、ふたを開けてみれば、iPhoneと同じくSIMロックされた形でソフトバンクからの提供となった。iPadの予約開始でソフトバンクの株価は上昇。多くの人が、iPadのSIMロック解除での販売を期待していたのかもしれない。

 SIMロック解除は、現在の携帯電話市場にどのような影響を与えるのか。本当にNTTドコモにユーザーは流れるのか。iPhoneやiPadのユーザーに対する影響はどの程度か――。日経BPコンサルティングは、こうした点を明らかにするため、「SIMロック解除に関するユーザー意識調査」を行った。その概要を報告する。

SIMロックに対する認知度は4割超

 そもそもユーザーは、SIMロックのことをどの程度知っているのだろうか。その結果をまとめたものが図1である。

図1●SIMロックの認知度
図1●SIMロックの認知度

 SIMロックに対する認知度(「よく知っている」と「まあ知っている」の合計)は45.7%だった(回答者数=1983人)。ニュース、新聞、ネットなどで見たり聞いたりしたユーザーが23.5%もいる。最近話題になっていたことを示しているといえよう。

 全ユーザーのうち、「SIMカードの名称/内容とも知っている」と別の設問で答えた945人に限れば、SIMロックに対する認知度は79.8%に上がる。当然ではあるが、SIMカードを理解しているユーザーのSIMロックに対する認知度は高いことが分かる。

音声通話とSMSだけでも料金が下がれば魅力はある

 SIMロックが解除されれば、基本的にどの通信事業者が提供する端末も利用できるようになる。ただし現状では通常の携帯電話の場合、利用に制限がある。各通信事業者の対応周波数の違い、サービスの違いなどがあるからだ。周波数が対応している端末でも、音声通話とSMS(ショート・メッセージ・サービス)しか利用できないのが実情である。

 SIMロック解除の利用意向は、実際のところどの程度あるのか。条件なし/ありでユーザーに聞いた結果が図2である。

図2●SIMロック解除の利用意向
図2●SIMロック解除の利用意向

 現在利用している端末の機能/サービスがそのまま利用できる場合(図2の「条件なし」)、SIMロック解除の利用意向ユーザーは42.7%。その中で「是非利用したい」というユーザーは21.2%だった。

 これに対し、SIMロック解除を利用した際に音声通話とSMSしか利用できないという現状に近い条件がある場合(図2の「条件あり(1)」)、利用意向をもつユーザーは19.0%にとどまる。何も条件を示していなかった場合の半分以下である。

 その中で「是非利用してみたい」というユーザーは、わずか3.3%。条件なしの場合に比べ、17.9ポイントも減少している。現時点での条件では、実際にSIMロック解除を行ったとしても、利用するユーザーは数%程度だろう。

 ただし、音声通話とSMSしか利用できなくても、月額利用料金が現状より2~3割安くなるように料金を設定した場合(図2の「条件あり(2)」)、SIMロック解除の利用意向は36.1%に上がる。

 その中で「是非利用してみたい」ユーザーは11.8%で、音声通話とSMSのみという条件がある場合よりも8.5ポイント増える。月額利用料金の設定次第で、他の通信事業者からユーザーを獲得できる可能性があることを示唆している。